THIS CITY IS HERE FOR YOU TO USE

LONG DIVISION 2015 13.JUNE.2015 ■WAKEFIELD

最近、日本でも話題になっている(らしい)ロンドンの変態サイケ・バンドのファット・ホワイト・ファミリー(Fat White Family)。

昨年グラストンベリー・フェスティバルのBBC映像で彼らを初めて観て「はぁ?!」と呆気にとられちゃった。統一感のないメンバーのファッション、酔っ払ってるとしか思えないボーカル、音楽もカントリーをガレージにしたというか、サイケというか・・・かと思うと突然とんでもなくポップな曲があったりと、ヘベレケが適当にセッションしてるかのようにとにかく掴み所がない。それなのに何だか引き込まれる。ある意味、衝撃的な登場でした。

そんなヘンなバンドなのにあれよあれよとメディアに取り上げられるようになり、あげくに「2015年最も期待のバンド」とNMEの表紙まで飾った彼ら。期待していいのか??あんなヘンなのに期待しちゃって本当に良いのか??(笑)そんなに期待させるならライブを観るしかないでしょ! と、わざわざ出かけたのがこのLong Division Festival 2015。

リーズ(Leeds)郊外の聞いたこともない街(失礼!)ウェイクフィールド(Wakefield)で開催され、まだ5年目という新しいフェスティバル。街のあちこちの会場でのライブを渡り歩くというパターンの街フェスですが、こうしたフェスでは会場間の移動がネックとなって思ったようにライブが見られないものですが、ちっさな街が舞台のこのフェスは、ほとんどの会場が道路を挟んだだけの近さ(笑)50ほどのライブがあるとはいえ、ほとんどが名前も聞いたこともないバンドですが、しかし大トリは懐かしのアシュ(ASH)!そしてハイド・アンド・ビースト(Hyde and Beast)の名前がっ!!そうですっ!The Futureheadsのドラマー、Dave Hydeのバンド!!よしっ!これなら列車に揺られてでも行く価値アリっ!


Wakefield

と、言っても、そんなに朝早くから出掛けても観るライブも無いので(また失礼っ!)鉄道の料金が安くなる朝10時にロンドンのキングス・クロス駅を出発して、一路リーズへ。ところが乗り込んだ列車の中で、前座席にいた30代中盤らしきオバちゃん3人組がうるさいったらありゃしない。
「30分もすれば静かになるでしょ?」と言うダンナに、「いやいや、リーズまで2時間、彼女達はしゃべり続けるよ。オバちゃんパワーをナメちゃダメっ!」と、オバちゃん心理を知り尽くしたオバちゃんな私。

ところがっ!切符の確認に来た陽気な車掌さん。
「切符を拝見。おお、リーズまでですか!良い1日になりそうですね!」
なんて一人一人に声を掛け、そのオバちゃんの所に来ると
「おおっ!ウェイクフィールドですか!素敵な旅ですね!」
えっ??ウェイクフィールド??まさかこのオバちゃん達も!?と、改めて彼女たちの会話に耳を傾けてみるとASHの話題で盛り上がってるじゃないか(笑)中学のPTAにいそうなフツーなオバちゃん達、実は元ASHのスーパーファン(追っかけ)なのかっ!?

ASHといえば、97年のロンドンで観た彼らのライブでは、終演後に会場の外にずらりと並んでいたお迎えの親御さんにビックリした思い出が。お迎えがいないとライブに行けなかったような子供たちが、今ではお迎えにいくお母さんの年齢なのか(シミジミ)ま、人のことは言えないが、ASHもどんな姿になっているのか(ドキドキ)

予想通り、ASHファンのオバちゃん達のテンションはウェイクフィールド到着まで上がりっぱなし。列車を降りていく彼女たちに「また会場でね!」なんて心の中で勝手に挨拶して、私たちはリーズのホテルにチェックイン。そして2両編成のローカル鉄道でウェイクフィールドへ。

ウェイクフィールドの小さな駅を一歩出ると、いきなりライブの音がガンガンと聞こえてくる。駅の隣の小さな緑の中庭がすでにフェスの会場で、入場フリーのこのステージは、他の会場に入場できない年齢の子供たちがフェス気分を楽しんでいて、こちらもちょっと気分が高まってきます。


Man Made

ごく普通のイギリスの田舎街ですが、駅から少し歩いたところにあるUnity Worksはこの街のカルチャー発信地?フェスのメイン会場でもあるここで、簡単に偽造できそうな(笑)名前も何も書かれていない紙のリスト・バンドをもらい(このフェスで偽造なんてしないよな)まずは1ポンドのパンフレットを買って出演バンドの解説を読んでいると、おおっ!Man Madeってのがジョニー・マーの息子のバンドなんだって!!(念のためですが、ジョニー・マーとは80年代UKを代表するギター・バンド、The Smithsのギタリストですよ。)

という訳でいそいそとそのビルの上階にあるMinor Hallに向かうと、パブぐらいの広さの会場にちょっと目の垂れ具合にジョニー・マーの面影のあるロン毛の青年が登場。彼がこのMan Madeのギター、Nileですが・・・顔にジョニーの面影があってもプレイにジョニーを求めてはいけません(苦笑)これといって特徴のないギター・ポップでした。残念っ。

このUnity Worksでは上下の階にMajor Hall, Minor Hallと2つのホールがあり、重ならないようにタイムテーブルが組まれているので、ひとつのライブが終わるとみんなビールを片手に上に下にと大移動。なのでみんなと一緒に向かったMajor Hallは、前週末のField Dayで観た(その話はこちら→)ボップ・バンド、Boxed Inが登場。まだフェスとしては早い時間なので、この小さい体育館ぐらいのサイズのメイン会場はガラガラでしたが、バンドはField Dayで観た時よりノビノビして、観客も彼らの上質シンセ・ポップに気持ち良く浸っていました。幼稚園ぐらいの女の子がステージ前でクマのぬいぐるみと一緒に全曲飛び跳ねてノリまくっていたのが可愛かったぁ。

それから別のメイン会場、裏にあるパブThe Hopを覗きにいくと、皆んな外でビールを飲みながら漏れてくる音を聴いてる。イギリスで一番良い気候の6月で天気も上々だからねぇ。

そしてもう一つのメイン会場がUnity Workの向かい側にあるTheatre Royal。そしてこの、こじんまりとしているけど2階席まであるクラシックな円形劇場のステージに登場したのがHyde And Beastですっ!


Hyde & Beast!!ちなみに左はNeilではありません(ドラム叩いてます)

The FutureheadのドラマーDave Hydeと、彼らと同じサンダーランドのThe Golden VirginsのドラマーNeil Bassettの、2人のドラマーが結成した60's&70'sなカントリー・バンド。ドラマー2人といってもツイン・ドラムじゃないですよ(笑)


日本じゃお目にかかれない
ギタリスト Dave Hyde

すっかりヒゲでモサモサになったDaveが登場・・と思ったら、次から次へとメンバーが登場!?しかもブラス隊まで!!こんな大人数構成のバンドなの!?てっきり2、3人ぐらいで細々やってるバンドなんだと思っていた(苦笑)とりあえず彼らの1stアルバム「Slow Down」しか聴いたことがなかったのですが、この日は2nd「Keep Moving」からの曲をメインに新曲も交えてのステージ。そう、「ライブ」というより「ステージ」という言葉の方がピッタリくるようなHyde and Beast。1stはロック色が強かったけれど、今の彼らはブギーやカントリー色満載のフォーク・ロック。70年代のKinksをちょっとまったりと、ちょっと田舎っぽく(ごめん、Dave!)した感じで、いやぁ、正直こんなに良いバンドだとは想定外っ!古めかしくてチープな会場の雰囲気にもぴったりで、ステージのバックに掲げられた星空の天幕や地味なライトが彼らの音楽を盛り上げてくれる。まさかこんな田舎のフェスで(失礼っ!)こんな最高な気分にさせてくれるライブに出会えるなんてね。来て良かったよ。

こんなヨーロッパ的な劇場も良いけど、小さなパブや、芝生の上に寝転がってビールを飲みながら聞いても良い気持ちだろうなぁ。こんなにフジロックにピッタリなバンドがいるのにどうして呼ばないのかなぁ・・・。

ライブの後は久々にDaveとご対面。ブラスの男の子と2人で物販で忙しそうだったのであまりゆっくりと話はできなかったけど、元気そうでなによりでした。「まだ2ndは聴いてないよ」と言うと「ビニール盤もあるよ」と勧められたけど、ん〜っ、重いので結構(苦笑)でも帰国してから買った2ndはメチャ良かったよっ!

Daveと別れてUnity WorksのMajor Hallに戻ると、地元バンドのMenace Beachがライブの真っ最中。男女2人のメンバーを中心に、同郷のHookworms、Pulled By Horsesなどのメンバーが集まったバンドだそうですが、まさに90’sのノイジーなシューゲイザー系。こういう音はどうしても苦手なので、抜け出してパブで休憩。サイダー(リンゴの発泡酒)を買ったら値段がロンドンの半額ぐらい・・・というか20年ぐらい前のロンドンでの値段だ(苦笑)おまけに炭酸水を頼んだら「これは無料だよ。」う〜ん、最近イギリス旅行に来るとその物価高に閉口してしまうのですが、それはロンドンだけの話。田舎は街の雰囲気もあまり変わっていないし、ホテルや物価も安いままなんだよね。

で、次はTheatre Royalに戻り、地元のHer Name Is Callaのライブです。10周年を記念するアルバムをリリースしたばかりのこのバンドは、バイオリンをフューチャーしたヨーロッパ的な重厚ポスト・ロック、と言うんでしょうか。でも同じ系統のThe Tindersticksのようなスケール感が無いので、それがイマイチ知名度が上がらない理由か?とはいえ、この日は、そのイマイチ感もこの劇場の場末っぽい雰囲気と相まってかなり良いライブ・・・と、ヨーロッパ耽美な世界に浸っていたのに、いきなりラストの曲になったらノイズに突入(汗)ギターをアンプに擦り付け、バイオリンをかきならし。でもこの手のエンディングがすごく古臭く感じてしまい、むしろあの世界感のままで終わる方がカッコ良かったのになぁ。ちょっとガッカリ。

ブーブーと文句を言いながらUnitity Worksに戻ると、遂にFat White Familyの登場ですっ!さすがにこの時間になると客席もかなり埋まり、大歓声の中でステージに現れた彼ら。相変わらずメンバー全員、ヘンなファッションで、調子っぱずれのようなダラダラした音で始まったFat White Family。70'sのハードロックと言えばいいのか、サイケデリックと言えばいいのか、マカロニ・ウェスタンと言えばいいのか、カッコ良い音なんだけどやっぱり掴み所がない。彼らを一言で表現するなら「猥雑」なバンド。音も雑然として、ボーカルも上を脱ぐのは当たり前、下も・・・脱いではいないけど、出してました(苦笑)ってな感じのバンドですが、でもこういう猥雑なバンドって最近見てないので、なんだか嬉しくなってくる(苦笑)Wakefieldの人たちもめちゃくちゃ盛り上がってました。


下品さがたまんないFat White Family!!

で、彼らが終わった後、皆が一斉に上のMinor Hallへ移動するのでとりあえずついていくことに。そこに登場したのがThe Lovely Eggsという男女2人のバンド。ランカスター出身ですでに10年選手らしいのですが、全く知らなくて期待もせずに見ていたら、これが意外とカッコいい! 頭から離れないようなキャッチーなメロディーのギター・ポップですが、ギターとドラムだけというシンプルな構成が生み出すLo-Fiっぽさとグランジのようなハードな音が気持ちいい。しかも驚いたのが満員の会場が大合唱!特に新曲「Magic Onion」なんてイントロが始まった途端に大歓声の盛り上がり。ご当地限定ヒット・ソングなのか!?どうも真相はBBCのマンチェスター・パンクDJ親父マーク・ライリーがラジオで彼らをヘビロテしていたからのようですが、とにかく自分が知らなかった分、この彼らの人気っぷりに驚いて、いやぁ楽しかった。


ご当地アイドル??The Lovely Eggs

ライブの後に隣にいた3人組(from マンチェスター)から話しかけられ、「このフェスの事をどうやって日本で知ったんだ?」とか「このバンド、知ってたのか?」とか興味津々に色々聞かれちゃったよ。で、「どこに泊まってるんだ?」「リーズだよ」「リーズなんかに泊まってるのか?(失笑)マンチェスターに泊まれよ」いやいや、あんた達は車だから良いけど、マンチェじゃ鉄道で帰れないよ(苦笑)

その後はMajor Hallで大人気の地元バンドPulled By Horsesをチラ観したり、裏のパブThe HopでThe Future Of The Leftをチラ観したりしてブラブラ。そしてトリはMajor Hallで懐かしのAsh!!満員のホールのどこかに朝の列車のオバちゃんたちもいるのか??どんな世代でも楽しめるようにと新旧とりまぜた選曲に子供から大人まで大歓声。正直、「いまさらAshねぇ」と、自分自身はそれほど盛り上がってなかったのに、それでも「カンフー」が始まれば、思わず笑顔で一緒に歌っちゃう(苦笑)それもこれもすでにオッさんになっているのに何だか憎めなくて可愛いASHだからこそ。ステージ上からメンバーの結婚報告をすれば、オバちゃん達が大ブーイング(笑)うんうん、今でも君たちのアイドルだねぇ。


おデコが光っても永遠のアイドルASH !!

そんな訳で、ちょっと後ろ髪を引かれつつもリーズ行きの終電に間に合うように大合唱の会場を後にしました。同じようにリーズに帰る人たちもチラホラ。同じ時に会場から出てきたASH世代のお母さんと娘が、リーズに到着するまでずっと楽しそうに話してました。

と、とってもスモールなフェスティバルだったLong Division。まだまだ出演バンドもマイナーですが、手作り感満載で小規模だからこその楽しさがあるフェスでした。なにより会場間がコンパクトなのが楽だわぁ(笑)こういうフェスティバルは続けてこそ成長していきます。以前出かけたLive at Leedsフェスティバル(その話はこちらから→)も、こんな名も無いスモール・フェスティバルでしたが、最近では毎年NMEにライブ評が載るような人気フェスに成長しました。そしてこのLong Divisionも発表された2016年のトリはLos Campesios!!グッド・チョイスだねっ!良いフェスティバルに育ててくださいよっ!

このサイトは、UKバンドのTHE FUTUREHEADSを中心にイギリスで観てきたライブのレポを書いてます。 他にもイギリスにまつわるいろんな話題を書いていますが、イギリスまで遥々と出かけたくなるような楽しさが 少しでも伝われば、そしてイギリスへ遥々出かける方の少しでもお役に立てればと思っています。

イギリス・ライブ・レポ June 2015

■Rough Trade Instore Live■
■TORRES■PINS■GIRLPOOL■

■East India Youth■
4.June Village Underground

■Sauna Youth■
5.June The Old Baths

■Field Day ■
6-7.June Victoria Park
part.1 / part.2
Savages/Django Django/Spector/
Eagulls/Outfit/Ducktails/Viet Cong/
Diiv/Boxed In/Telegram/Happyness/
Bad Bleeding/Hooton Tennis Club etc.

■Perfume Genius■
10.June Royal Festival Hall

■Slaves■
11.June New Slang Kingston

■Band of Holy Joy■
12.June The Macbeth

■Long Division 2015■
13.June at Wakefield
Fat White Family/Hyde and Beast/
The Lovely Eggs/Man Made/
Menace Beach/Her Name is Calla/Ash etc.


これまでのライブ・レポートetcはこちらから→