SAUNA YOUTH 5.JUNE.2015 ■THE OLD BATHS
春頃にイギリスのネット・ラジオBBC6(特にパンク大好きマンチェスターおやじDJのマーク・ライリー)がヘビ・ロテしてたカッコいいパンク・ソング!それがロンドンの4人組バンド、サウナ・ユース(Souna Youth)の新曲「Transmitter」!
NMEでチラッと名前を観た記憶はあるけど、どんなバンドが全然知らない。でも久々にハートをキュッと掴まれるそのソリッドでローファイなパンク・ソングに「ライブが観たいっっ!!」でもチケット・サイトを見ていてもどこにもライブが無さそうだぁ。思い立って彼らのフェイス・ブックを探してみると、うおっ!たった1つだけ掲載されてるライブ予定がロンドンじゃねえかっ!しかも他に何もライブが無くてどうしようかと悩んでいた日だっ!なんて幸運っ!という訳で早速そのライブのチケットを購入・・・でも慌てて買わなきゃいけない程の人気のバンドでもないよなぁ(苦笑)でも、ほら、ヘビ・ロテしてますし。
チケットを購入したのはいいけど、このライブ会場ってドコ?で、またネットで検索すると、東ロンドンのハックニー・ウイック(Hackney Wick)という、あまり治安が良いとは言えない地区。でも会場のサイトには「食事やお酒が楽しめるアート・スペース」なんて紹介されていて、う〜ん、東ロンドンはロンドン・オリンピックを契機に再開発が行われたので、もしかするとこの辺りもショーディッチ(Shorditch)やホクストン(Hoxton)のようにオシャレな地域に生まれ変わっているのかも??
こっちと言われても・・・
ともかく、このライブの翌日からは同じ東ロンドンで行われる「Field Day」フェスティバルに行くので、この日からは東ロンドンのエリザベス・オリンピック・パークの近くにあるプレミア・イン(Premier Inn)ホテルに移動しました。部屋からロンドン・オリンピックのモニュメントやスタジアムが一望という、明らかにオリンピック客目当てに作られた巨大なビジネス・ホテルで、部屋は広いし、風呂は広いし、テレビはデカい。それまで同じ料金でロンドン・キングス・クロスのシャワー・トイレ共同のB&Bに泊まっていたから、真っ白なシーツに思わず頬ずりしちゃう(苦笑)ロンドン中心地のホテル料金の高さは異常ですよ・・・
と、ホテルは(ちょっとだけ)ゴージャス気分で、すぐ隣にはWestfieldという巨大なショッピング・センターもあり、東ロンドンの僻地だった(失礼)ストラトフォード(Stratford)地区を様変わりさせたロンドン・オリンピックでの再開発の凄まじさをマジマジと感じさせてくれました。
そしてSauna Youthのライブ会場、ザ・オールド・バス(The Old Baths)へはホテルの裏通りからバスで2駅。「ショッピング・センターで夕ご飯を食べていく?」というダンナさんに、「会場でも食事ができるみたいだから、そっちで良いんじゃない?」と、バスに乗って会場へ向かうと・・・2駅といっても、延々と人気のないオリンピック・パークを走っていき、到着したところは高級とは言えない雰囲気の住宅地・・・おまけにThe Old Bathsはどう見ても町のコミュニティー・センター(苦笑)学生たちが発表会か何かの片付けをしてるぞ。えっと・・・食事やお酒が楽しめるはずなんだけど・・・それは駐車場の片隅の物置で営業してる宅配ピザ店のことかっ??(苦笑)周りの住宅地には何もなさそうなので、仕方なくこのピザを注文してベンチで食べました。お店のニイちゃん達はフレンドリーで、マルガリータはおいしかったですけどね。
開場して中に入ると、やっぱり公民館だ(苦笑)バスケット・コートぐらいの広さのホールには一応バー・カウンターなんかはあるけど、ホールの入り口では主催のUpset The Rhythmのスタッフが机を出して「まだチケットは買ってない?じゃあ6ポンドね」なんて、何ともDIY感覚満載。おまけにトイレに入れば、ドアのサイズが合っていなくて思いっきり隙間が空いていて、う〜ん、とってもDIY感覚(苦笑)
こんなトコにお客さんが集まるんだろうか・・と思っているうちに、サポート・バンドのRattleとPrimetimeが登場。
Rattles
女の子2人のツイン・ドラムという変則なバンドのRattle。2台のドラムと2人の声が生み出すサウンドは、ちょっとSLITSを思い出すようなプリミティブでパンクな音。でも彼女たちの音以上に印象的だったのは、最近はDrengeやSlavesみたいなドラムとギターの組み合わせのバンドがお気に入りだけど、でも「そうか、ドラマー2人でもバンドがやれるんだよなぁ」と、何だかあらためてパンクの自由さを気づかせてくれるバンドでした。
そしてPrimetimeは女の子4人のガールズ・パンク。これがめちゃくちゃヘタクソで(苦笑)なぜか昔の少年ナイフを思い出すようなノリ(ヘタだからって訳じゃないけど。)頭で考えるより「とにかくバンド、やっちまおうぜっ!」的な初期衝動がビシバシと出ていて、とにかく楽しいバンドでした。
さらに「スペシャル・ゲスト」とアナウンスされていたRichard Rock'n Roll の登場!ステージに現れたのは1人の男の子。バックを務めるSauna Youthのロックな演奏に合わせて彼が歌い出すと・・・すっげえ音痴(爆笑)な、なんだ?コレ!?どうやらSauna Youthの友人らしいんだけど、歌詞を書いたノートを見ながらシャウトする彼は、音痴だっ!(笑)リズム感ゼロだっ!(笑)バックのSauna Youthも彼に合わせるのに必死だぞっ!!(爆笑)いやいや、これこそロックン・ロールだ!パンクだ!・・・なのか??(笑)でも彼の真剣さが笑えない20分ほどのステージ。「夢がかなったよ!ありがとう!」と満面の笑みのRichard Rock'n'Rollでした。結局なんだかわからないままでしたがインパクトは最高(笑)
なんて笑っているうちに、ホールはほぼ満員に。さすがBBC6のヘビロテの成果??ラフ・トレードのインストア・ライブ(その話はこちら→)の常連さんもチラホラと。
ホールの片隅でちょっとだけ高くしてあるステージにフラっと現れたSauna Youth。軽くサウンド・チェックをすると唐突に始まったのが 「Transmitter」!! 思わず心の中で「うおぉぉ!」と歓声をあげてしまったけど、ステージ前に集まっていたお客さん達も静かにどよめいているのが分かる(笑)痙攣するようなアップ・ビートに、ドラムスと女性のツインボーカル・・・って、この女の子、ボーカルと言って良いのか??(苦笑)映像で彼らをチラッと観た時に「あれ?このバンド、女性ボーカルなの?とても女性の声に思えないんだけど・・・??」と思っていたけれど・・・一応、彼女がマイクを持ってステージ中央にいるんですけどね、でも聴こえてくるのは、ドラマーが歌うボーカルの声ばかり。で、かすかに聞こえるボーカルと、横に置いたちいさなキーボードを時折弾く彼女。なんとも不思議な存在。
見た目は女性ボーカル・バンドのSauna Youth(笑)
リリースされたばかりのアルバム「Distractions」から(たぶん)曲順そのままに次々と演奏され、低いステージを取り囲む観客たちが静かに体を揺らす。うわぁ、この雰囲気、昔のパンクのライブみたい。Sauna Youthの音楽も、BazzcocksというかThe Fallというか、70'sの北部のインテリなパンクの空気感で、なんだかパンク創生期に立ち会っているかのような錯覚をおこしそう。と、言っても懐メロってことじゃなく、Sauna Youthもモロ70'sのイギリス・パンクのようでありながら、Sonic YouthやFugazi、グランジのようなアメリカのオルタナティブを吸収したサウンドでしっかり今のロックの音なのです。それが疾走するかのようなスピードで、いや、もうカッコ良いですっ!
ところが困ったことに、このホールはライト設備が一切無い(苦笑)太陽の光が窓から入ってきていた時間はまだしも、さすがに夜が遅いイギリスの夏とはいえ、10時も過ぎれば外は真っ暗。ステージも真っ暗(笑)ステージの横に置かれたシェード・ランプが唯一のステージ・ライト。おまけにステージ前で踊りまくるPrimetimeの子たちがライトにぶつかって、あわわ、これが倒れたら真っ暗だぜっ(汗)と、いうかメンバーは手元が見えるのか??DIY感にも程があるっ(苦笑)
下に写っているのが唯一の明かりのランプです。
なので、珍しくフラッシュたいてます。
と、そんな真っ暗な中でカッとばされた30分あまりのSauna Youthのステージ。会場の蛍光灯が点いた時には満員のお客さんが皆んな、満足し切ったかのような満面の笑み。こんな街外れの公民館でエエもん観させてもらいましたなぁ(笑)とはいえ、あまりノンビリしてられる地域でもないので、まだライブ後の喧騒が残っているうちにバスに飛び乗って公民館を後にしました。こんなDIYなライブは久々で、懐かしいような、忘れていた何かを思い出させてもらったなぁ。イギリスでもまだこんな感覚がしっかり残っているんだね。なんだか頼もしい気分にもなって、バスの中でずっとニヤニヤしちゃう、そんなSauna Youthのライブでした。