DOCTOR WHOなつぶやき
イギリスのSFドラマ「ドクター・フー」の話題を拾った時につぶやいてます。
June 2018
「ドクター・フー」を復活させた男、脚本家ラッセル・T・デイヴィスによる久々のBBCドラマ「A VERY ENGLISH SCANDAL」が放送され・・・ました(いつも情報が遅いサイトです。)
とってもイギリス的なスキャンダルがドラマに / BBC
70年代にイギリスの国会議員で初めて殺人教唆の罪で起訴されたジェレミー・ソープ。彼の政治的スキャンダル事件をベースにしたこのドラマは、ヒュー・グラントが25年振りのイギリスTVドラマ出演(やっぱり例の事件で干されていたの?)そして「パディントン2」に続いてのベン・ウィショーとの共演(笑)という事でも話題になっていましたが・・・これがメチャクチャ面白かったんですよぉ!!
農場で働く青年ノーマン・スコット(ベン・ウィショー)に一目惚れした国会議員ジェレミー・ソープ(ヒュー・グラント)。彼を頼ってロンドンに出てきたノーマンにアパートを与え、二人は愛人関係となるが、その蜜月も長くは続かなかった。政界では飛ぶ鳥を落とす勢いだったジェレミーは、リベラル党の党首となって首相の座を狙うが、度々彼の周囲に現れ、二人の同性愛関係を吹聴するノーマン。自らを守るために、ジェレミーはノーマンの殺害を画策するようになる・・・
25年ぶりにイギリスのTVドラマに登場の"おヒュー”様 / BBC
と、ストーリーだけを聞くと、犯罪ドラマか政治ドラマのようですが、ベン・ウィショーがインタビューで言っていたように、実はこれがかなりのコメディ・ドラマ!それなりに真剣に殺人を考えるジェレミー、彼のためなら何でもするけど殺人はちょっと・・な友人たち、自分の発言が国中を巻き込むスキャンダルになるなんて考えもしないノーマン、そしてジェレミーの妻、ノーマンを愛する人たち、彼を捨てる人たち。人間臭くて憎めない人たちのドタバタが、ラッセル・T・デイヴィスらしいユーモアに溢れたセリフと軽快なテンポで笑わせてくれます。
でも、このドラマを単なるドタバタ・コメディで終わらせないのが、この愛おしいほどに愚かな人たちを優しい眼差しで見つめるラッセル・T・デイビスの脚本と、これでもかと言わんばかりに贅沢に揃えまくった実力派俳優たちの演技力。
実力派俳優のひとり(笑)
ノーマン・スコットを演じるベン・ウィショー! / BBC
「ラブコメ・キング」なんて汚名を蹴り飛ばすヒュー・グラントの演技の素晴らしさは当然ですが、やっぱりベン・ウィショーのオカマちゃんっぷりに目が釘づけ(笑)エキセントリックで大胆、でもナイーブで、おとぼけなぐらいに人を疑わず、芯が強くてチャーミング、そしてジェレミーが初めて出会った頃の純粋無垢な雰囲気を失わない。ベン・ウィショーらしく作り出したノーマン・スコットというキャラクター。そしてこのノーマンを好きになってしまったからこそ、このドラマのエンディングでのサプライズには思わず笑顔になってしまうんです。
こんな純朴な青年が・・・
堂々たるオカマちゃんになります(笑)/ BBC
放浪生活を送りながら、相手構わずジェレミーとの肉体関係を赤裸々に喋りまくるノーマンも、その本心は金目当てでもLGBTのヒーローになる事でもなく、自分とジェレミーは恋人同士だったのだと世に認めさせたいだけ。そしてジェレミーの憎しみも、その裏にあるのは、嘘を重ねて生きる自分とは正反対のノーマンへの嫉妬と、彼との蜜月の思い出。普段は機関銃のように喋るジェレミーとノーマンが何も話さないラスト・シーンは、実は裁判の終わりこそが二人のラブ・ストーリーの本当の終わりだったのだと、二人の俳優はその表情だけで観る者たちに伝えてくるのです。
イギリスでも「BAFTA(英国アカデミー賞)間違い無し!」と大絶賛されている「A Very English Scandal」!きっと日本でも観られると思いますが、まだしばらくはiPlayerでも観られますので、ぜひぜひチェックしてください!
「”BAFTA間違いなし!”ですってよ!」「うっそー!」 / BBC
・・・だからね、BBCのおエライさん!こんな素晴らしいドラマを作っているんだから、世界中の人たちが観られるようにしようよっ!!ライセンス料ぐらい払うからさっ・・・という心の叫びはなかなかBBCには届かず、当サイトがオススメしていたVPNソフト「Tunnelbear」ではiPlayerが観られなくなりました。でもまだまだ頑張ってる業者はありますので、その紹介はこちらの→「デジタルな話」に追記しておきます。
ちなみにドラマの中で、ウェールズのド田舎でノーマンと関係を持つ未亡人グエンを演じているのは、「ドクター・フー」のスピンオフ・ドラマ「トーチウッド」で、グエン・クーパを演じたイヴ・マイルズ!今回は、ノーマンの元を訪ねてきて、いきなりノーマンを食っちゃう肉食系で強烈なオバちゃんを演じてますよ。
トレード・マークのすきっ歯は相変わらず
そして、そして、ジェレミーの弁護士、ジョージ・カーマンを演じるエイドリアン・スカボローは、「ドクター・フー」第7シリーズの「A Town Called Marcy」で、Dr.カーラー・ジャック役として登場していた俳優。今回は「Marciless(無慈悲)」と評される強烈な個性の弁護士を演じていますが、彼はローレンス・オリヴィエ賞を受賞したこともある名優だそうですよ。ほんとに「ドクター・フー」って贅沢なドラマですねぇ。
宇宙人カーラ・ジャックより強烈な弁護士(笑)
そして更に、更に、このドラマでは音楽担当も「ドクター・フー」シリーズでお馴染みのMURRY GOLDです!クラシックなサウンドからディスコ・ミュージックまで、このドラマのリズムと時代にピッタリと合っていて、ここでも良い仕事してますよ。