アンドリュー・スコットの「ハムレット」を観てきました!■August 2017


Hamlet / Almeida Theatreのサイトより

英国俳優アンドリュー・スコット(Andrew Scott)といえば、大人気BBCドラマ「シャーロック(Sharlock)」の中で、シャーロックの宿敵モリアーティでの怪演で日本でも知られていますが、その彼がハムレットを演じるなんて聞いたら見たくなりますよねっ!?観てきましたよ!

アンドリュー・スコット主演の舞台「ハムレット(Hamlet)」。この舞台は元々、今年4月にロンドン・イスリングトン地区(Islington)のアルメイダ劇場(Almeida Theatre)で公演されていましたが、高い評価と人気のため、7月からウエスト・エンド(West End)のハロルド・ピンター劇場(The Harold Pinter Theatre)での再演が決定しました。

今回のロンドン旅行のメイン目的は、このアルメイダ劇場で行われるベン・ウィショー主演の舞台「AGAINST」(その話はこちらで→)。この舞台が発表になって劇場のサイトをチェックすると、「アンドリュー・スコットが『ハムレット』を演るんだ!?」メチャクチャ観たいけど、ベン・ウィショーの舞台のためには、そんな時期に渡英なんかしていられません。指をくわえてガマンしていたら、その再演が決まったとのニュースが発表され、しかもラストの2週間がちょうどベンの舞台と重なってるじゃないですか!


Hamlet / 写真はAlmeida Theatre上演時

そんな訳で、ベン・ウィショーの舞台のチケットをゲットした後、こちらのチケットも購入しました・・・がっ!やっぱりチケットが高いよ、ウエスト・エンドは(涙)(ちなみに「ウエスト・エンド」とは、NYのブロードウェイにあたる、ロンドンでメジャーな劇場が立ち並ぶ中心地です。)ベン・ウィショーの舞台が最前列ド真ん中の席で約40ポンド(約6000円)なのに対して、こちらは1階11列目の真ん中で95ポンド(約14500円)・・・アルメイダ劇場で観ていれば半額だったのか・・・でもその時のチケットは即完売状態だったそうですからね。

ちなみにチケットはアルメイダ劇場のオフィシャル・サイトがリンクしていたシアター・チケット販売サイトで購入しました。他にもいろいろなチケット・サイトが販売していましたが、ここが一番良い席を扱っていて、一番安く買えましたよ。

そして8月、ロンドンに無事到着し、無事にベン・ウィショーの舞台を観て、無事にベン・ウィショーにサインをもらって(苦笑)そして遂にアンドリュー・スコットの舞台当日。

それまでは8月末のイギリスとは思えないような、日焼けするぐらいの晴天続きでしたが、この日は肌寒いくらいの雨でした。

ロンドン繁華街の中心地レスター・スクエア(Leicester Square)からすこし外れた脇道にあるのがハロルド・ピンター劇場。開演1時間前に到着すると、すでに大勢の人たちがロビーでワインやビールを飲んでのんびりと・・・って、ロビーが狭いよっ!到着する観客が雨を避けて次々とロビーに入ってくるので、アッと言う間にギュウギュウ状態。2階のバーは多少空いていても座る場所もなく、1階のロビーは立つ場所もない(苦笑)そんな状態ですでにちょっと疲労感が。早く開場してよ。

その上、今回の舞台が3時間半(インターバルを含めて約4時間!)と知って、さらに疲労感が(苦笑)いやいや、英語がそれほど得意ではない者にとっては、長時間集中してセリフを聞き取るだけでもヘトヘトなんです。ベン・ウィショーの舞台は2時間半でしたが、それでも初日は脳みそがクタクタになりました。それなのに3時間半・・・観る前からドッと疲れが。

開演15分前頃にようやく客席のドアが開き、皆、せきを切ったかのように場内へなだれ込みました。


Hamlet / 写真はAlmeida Theatre上演時

ハロルド・ピンター劇場は1881年から続く歴史ある劇場で、重厚なデザインの階段や扉、壁の装飾にその歴史を感じさせますが、しかし・・・「古い」というのは当然良い事ばかりではありません。

なにしろ劇場の床がほぼ平坦・・・。前席に体の大きな人が座ったら、舞台はほとんど見えません。運良く私の前席は小柄な人でしたが、隣の女性は途中でお連れの方と席を替わってもらっていました。ただでさえ列間が狭いのに、隣の席では前席の背もたれが壊れていたので、ずっと膝に当って辛そうでした(しかもところどころに同じ状態の背もたれがある・・・直せよ・・・。)

さらに女性トイレも少ないので常に長蛇の列ができてしまう。なのでインターミッションの時なんて、女性達がトイレから戻ってくるまで舞台がスタートできない始末。

こうしたクラシックな劇場を楽しむのも良いんですが、前日まで出かけていたアルメイダ劇場が、古い劇場の外にロビー&カフェ&トイレを増設したとても居心地の良いモダンな劇場だったので、その違いに楽しむ心の余裕を失っていました・・・。


The Harold Pinter Theatre

さて!肝心の「ハムレット」はどうだったのかと言いますと・・・セリフが全く分かりませんでした(苦笑)そりゃあシェークスピア劇の英語を完全に理解しようなんて思ってませんでしたが、ン十年前にダニエル・ディ・ルイスのコテコテなハムレットを観た時でも、もう少し理解できたと思うんだけど・・・アンドリュー・スコットのあのモゴモゴした喋りは聞こえにくし、俳優によってはわざと北欧なまり(?)で話してる?しかもこの古い劇場は天井が高いので(4階席まである)声が聞こえにくい・・・。

それなのに、なぜかセット・チェンジの度に流れるフォーク・ロック系の音楽(あれがローラ・マーリングの歌?男性シンガーだと思い込んでいたけど・・・)は大音量でうるさい・・・。この劇場では以前Kinks(60年代に活躍したUKロック・バンド)のミュージカルをやっていたので、その時の音量のデカさが癖になってるのかな?(苦笑)

ともかく!文句ばかり書いてしまいましたが、舞台そのものは面白かったです!


Hamlet / 写真はAlmeida Theatre上演時

時代を現代に移し、ステージには北欧家具が置かれ・・・って、そうだよ!「ハムレット」はデンマークの物語なんだよ!と、今更ながらに思い出させてくれました。「ハムレット」に北欧家具を使うなんて、確かに理にかなってる。意外な発想!

ステージを分ける現代的で硬質なガラス戸が置かれ、ステージの前面と奥、時には客席までもステージの一部となって世界が交錯する。さらにステージ上の巨大ディスプレイにはデンマークのニュース映像や、国王の亡霊が写り込むCCTV映像が映し出され、服装やセリフが現代的なだけでなくて、「ハムレット」の世界が現代社会を縦横無尽に飛び回っているかのよう(そして予想外のインターミッションへの入り方に場内爆笑。)

そして、そんな中でちょっとぽっちゃり顏(笑)のハムレットは、どこかコミカルで子供のような駄々っ子。ふてくされて、すぐに癇癪をおこしてはバタバタと地団駄を踏む。こんな愛嬌のあるハムレットは初めてでしたよ。オープニングでトランク・ケースを持って登場してきた時には思わず寅さんかと思いました(笑)


「オフェーリア!帰ったぞ!」「お兄ちゃん!・・じゃなくてハムレット!」(笑)
Hamlet / 写真はAlmeida Theatre上演時

そしてオフェーリアを演じたジェシカ・ブラウン・フィンドレイ。ハムレットとじゃれあう無垢な愛らしさ、そして悲しみの果ての狂気を美しく演じていた彼女も良かったですよ!

と、舞台自体はとても面白かったのですが、しかし・・・観客があちこちで居眠りしてやがる(苦笑)隣の人なんて、思いっきりガクっとバランス崩して、慌てて起きていたし・・・なんか集中できないよぉ!なんて、文句を言いながらも、私自身もインターミッション直前あたりはちょっと意識が飛びそうになりましたが(苦笑)時差ボケの残る体で2時間ブッ続けはキツイ・・・。

そして何より最低だったのが、ハムレットが死ぬシーンで鳴り響いた携帯の着信音(涙)ハムレット最後のセリフの間じゅうピョロピョロ鳴ってた・・・しかも2回!さっさと電源を切りやがれっ!ヒド過ぎるぅ。

う〜ん、ウエスト・エンドの劇場に来る観客の大半は、もっとエンターテイメントな舞台を求めているのかなぁ。ともかく、来年早々にBBCがこの舞台をTV放送するので(というコトはNHKでも放送する??)TVの前でもう一度じっくり観てみますか(苦笑)


パンフレットと台本。
台本の表紙はアルメイダ劇場での上演当時に使われていたプロモ写真です。