DEFINITELY A MADMAN WITH A BOX ! 「ドクター・フー」紹介

【March 2012】

イギリスの人気脚本家ラッセル・T・デイヴィスによる1999年のTVドラマ「QUEER AS FOLK」の中のワンシーン・・・

スチュワート
「きっと、そいつもドクターの名前を全部覚えさせられるんだろうな。ウィリアム・ハートネル、パトリック・トラウトン、ジョン・パトウィ、トム・ベーカー、ピーター・デイブソン、コリン・ベーカー、シルベスター・マッコイ・・・」
ヴィンス
「 ポール・マクガンは?」
2人で声を合わせて
「ポール・マクガンは数にいれない(笑)」

主人公のスチュワートとヴィンスはゲイで幼なじみ。そしてヴィンスは大の「ドクター・フー」オタク。そんな二人が互いに関係を確認するための合い言葉のように、ドクターを演じた俳優の名前を挙げていったのが、このシーン。

でも、もしもこのドラマが2011年に制作されていたら、きっとこんな台詞が追加されてたはず!?

スチュワート
「そしてクリストファー・エクレストン、デヴィッド・テナント・・・」
ヴィンス
「デヴィッドはゴージャスだったね!」
スチュワート
「じゃあマット・スミスは?」
2人で声を合わせて
「Matt Smith is COOL !!(笑)」

なんて具合に、別のドラマでもネタにされてしまうのが、イギリス生まれのSFドラマ「ドクター・フー」!!このドラマを応援しつつ、マット・スミス演じる11代目のドクターをちょっと日本で盛り上げてみようっ!と始めたのがこのサイトです!

そもそも「ドクター・フー(DOCTOR WHO)」って何なの?

イギリス国営放送BBCが制作するSFドラマ。ギネス・ブックから「世界で最も長く続いているSFドラマ」として認定され、2013年にはなんと50周年を迎える超ご長寿ドラマなのです。


「ドクター」と呼ばれる異星人が、宇宙船「ターディス」に乗って宇宙や時間を旅しながら、異星人の襲来や、絶対絶命の危機から世界を救う、お子様向けSFアドベンチャー!!・・・なんて言ってしまっては身も蓋もない。

1963年の放送開始から本国では人気のSFドラマでしたが、89年にTV放送が一旦終了しても、ドラマや音楽などイギリスのポップ・カルチャーの中ではカルト的な存在となっていました。

そして冒頭で紹介したドラマで、「ドクター・フー」オタクを登場させてしまう程、自身がオタクだった脚本家ラッセル・T・デイヴィスが総合プロデューサーとなり、BBCウェールズと組んで2005年に「ドクター・フー」を復活させました。

すると、子供たちはもちろん、このドラマで育ったお父さんお母さん世代から、昔を知らない若い世代までをも巻き込み、イギリスでは社会現象とも言えるほどのメガ・ヒット・ドラマとなったのです。

最近では国内にとどまらず、BBCの番組の中でも海外での売り上げTOP5に入っているらしい?ハリウッドが映画化を画策しているとか?BBCの地方局が作るこのドラマが、どうしてそんなに人気なんでしょうか?


2007年のクリスマス直前
ロンドンの老舗おもちゃ屋Hamleysのショーウィンドウは、「ドクター・フー」一色

そんな「ドクター・フー」の魅力とは??

もちろん!大人も子供も楽しめる昔ながらのドキドキワクワクなSFの世界!モンスター!UFO!ロボット!タイムスリップ!etc.etc.

そしてジェットコースターのようなテンポで45分に濃縮されたストーリー!連続ドラマなんて見てられないという私みたいな人には最高!(笑)

でもこのドラマの最大の魅力はとことん「BRITISH(英国的)」なトコロでしょう!

イギリスという国は変な事が大好き。異星人のコスチュームが、ピンストライプ・スーツや蝶ネクタイなんてオカシイでしょ?「木製の電話ボックス(ドクターの宇宙船)」がクルクル宇宙を飛んでるなんてヘン過ぎでしょ?

主人公は異星人なのに、変身もできないし必殺技もない。決め言葉は「RUN !(逃げろ!)」いつも口先八丁で敵を倒す。そんなヒーロー、ヘン過ぎ!?

でもそれこそが「ドクター・フー」なのです(笑)


イギリスのグラスゴーには街のあちこちにターディスがあるのです

「ドクター・フー」の世界は低予算のせいで(苦笑)SFのくせにチマチマしてますが、派手なアクションにも巨大なセットにも頼れないからこそ、イギリスらしいヒネたストーリーやセリフが際立っているんです。

そしてSFなのに人間描写(異星人描写?)が妙にリアルなのもイギリスらしい。
シニカルな世界観のこのドラマは子供向けでもハッピーエンドとは限りません。そしてドクターの孤独や人間たちとのすれ違い、悲しみや苦悩がしっかり描かれ、それがSFオタじゃない人達をも魅了するドラマにしています。

そんな「ドクター・フー」に興味を持った方はCS放送のLaLaTVで絶賛放映中なので こちらから放送予定をチェック!

でも・・・残念なコトに、今放送されているのはデビッド・テナント演じる10代目ドクターのシリーズ。しかしここでお勧めしたいのは11代目ドクターなのです!

11th DOCTOR(11代目ドクター)ってなに??

このドラマの主役「ドクター」は惑星「ギャリフレイ」からやってきた「タイムロード」。そしてタイムロードには死にそうになると別人に肉体を再生させて蘇ってしまうという、TV的にとってもおいしい習性があります。そんな「リジェネレーション」を繰り返し、ドクターを演じる俳優が代替わりすることで50年近くもドラマが続けられた訳です。

そしてこの復活したシリーズでも10代目のドクターを演じて大人気だったデヴィッド・テナントが2009年で降板し、その後を引き継いだのが当時弱冠26歳のマット・スミスでした。


11thドクター/マット・スミス ちょっと髪が長いけど
 BBCのサイトより拝借です

しかし、ドクター俳優としてはあまりに若いマット・スミス。
おまけにこの人気を作り出したラッセル・T・デイヴィスも同時に降板し、ドラマの先行きがやや不安視されていましたが・・・

でも新しく総合プロデューサーとなった脚本家スティーブン・モファットが作り出す独特な「ドクター・フー」の世界、そしてマット・スミスが演じる11thドクター。これがもうっ!イイんです!!

最大の魅力は新しい11thドクター!!
MADでエキセントリック!!アクティブで身が軽いがノリも軽い!マシンガントークのスピードは先代の5割増し!すぐ嘘をつくし、すぐ食べ物を吐き出すし、すぐ女性にはデレデレになる。若いのか感情のコントロールができず、すぐに怒るし泣くし、でも寂しんぼう。
とりあえず自分が身につけるものは何でもクール!口癖は「BOWTIES ARE COOL!(蝶ネクタイはクール!)」
オトナな10thドクターに比べると、とてもお子様なドクター。これのどこが良いのやら(笑)


11thドクターのおバカっぷりにイラつく10thドクター・・・なんてね。

でもその無邪気さがドクターの内面をさらけ出し、マット・スミスのナイーブな風貌と相まって、陰のあるヒーローではない新しいドクター像を作りだしているんです。
おまけにこれまでは避けてきたような、時空を旅していればこんな事も起こるだろうという負の側面が次々とドクター達を打ちのめし、ここまでやるモファットはきっと「S」なんだろうと(笑)

もちろんデヴィッド・テナントが演じた10thはベスト・ドクターだと思いますよ(トム・ベイカーとか知りませんよ(苦笑))なので実はこの11thドクター(特に2011年のシーズン)はちょっと賛否両論なのです。暗くて、こんがらがったストーリーで、おまけにヒーローじゃないドクターなんてねぇ・・・。

たぶん10thドクターが「太陽」だとすれば、11thドクターは「月光」なんです。
太陽の下は明るくて皆大好きです。でもその世界は時々平坦に見えることもある。
月光の下は光と闇が混ざり合う世界。その世界は美しくもあり、怖くもあり。孤独だったり、暖かかったり。そんな色んな感情がわき上がってくる。11thドクターはそんな世界なのです。

そしてこの2011年シーズンの演技でマット・スミスはドクター俳優として初めて英国アカデミー賞にノミネートされているのですよ(結局取れなかったけどね(苦笑))


11thドクターをプロモしちゃうビデオを勝手に作ってみました。

11th DOCTORのシリーズの魅力は?

もちろんスティーブン・モファットが得意なSFらしいトリッキーなストーリーとドクターのキャラが魅力ですが、これまでとはちょっと違う11thドクターとコンパニオン達との関係もイイ!

ドクターはいつも誰かを「コンパニオン」として旅に誘いますが、11thドクターのコンパニオンはエイミーと彼女の婚約者ローリーの2人。そして謎の女性考古学者リバー・ソングが時々加わり、まるで友達同士のようなワイワイした雰囲気が楽しいし、なにより小悪魔みたいにドクターやローリーを振り回すエイミーがキュート過ぎる〜。


アメリカン気分なドクター達 BBCのサイトより拝借です

でもそんなエイミーがドクターに出会ったのは7歳の時。
イングランドの田舎町に住むスコットランド訛のひとりぼっちの少女アメリア(エイミー)は、タイムロードの最後の生き残りで孤独なドクターに出会います。でも5分で戻るとターディスに乗りこんだドクターと再会するのは12年後(苦笑)
そして2人は旅に出て、その中でエイミーは成長していきますが、ドクターにとってエイミーはいつまでも7歳のアメリア。そしてエイミーにとってもドクターは待ち続けた不思議なヒーロー。
でもお互いがあの時のままではないと気付いた時・・・。
こんな切ない2人の出会いと別れがイイんですよ。(あ、そんな2人の関係をヤキモキしながらも見守るローリーの男気もグッドです。)

そしてこの3人に加わる謎の考古学者リバー・ソング。
秘密だらけの彼女ですが、10thドクターが初めて彼女に出会った時、ドクターは自分の未来や秘密を知る彼女を恐れ、そしてリバーは自分を知らないドクターにショックを受けました。
でも11thドクターとして再会すると、警戒しつつも彼女にデレデレになっていくドクター(笑)しかし実は出会う時間が逆行している2人。だからリバーにとっては出会う度にドクターは彼女を知らなくなり、そして彼女が最後に出会うドクターは・・・・。
こんな時間の中ですれ違う2人がまた切ないのです。


と、こんなストーリーを繰り広げるのが11thドクター。

この2011年のシーズンはイギリスの音楽紙NMEのアワードでベスト・ドラマにノミネートされました(結局これも取れなかったけどね(苦笑))この音楽紙でドクター・フーがノミネートされたのはたぶん初めて。つまりそれだけ異色でSFファン以外をも引きつけているシリーズと言えるのでは?

興味が湧いた人はAmazon UKでDVDを買っちゃおう!(Blue-rayでもいいけどね)
英語字幕があるからなんとかなるっ!
あっ!でもPALだのリージョン・コードだので普通のプレイヤーでは見られないかっ(涙)
だからだから、日本で放送されるよう皆でプッシュしようっ!


●Jan_2013●追記●

2013年にスタートした第7シリーズ。「Angels Take Manhattan」でドクターとお別れしたエイミーのメモリアル(?)クリップを作ってみました。
全33話(+α)を詰め込みましたが、全て思い出せる??