VICTORIOUS FESTIVAL at Portsmouth part 3 ■27/August/2017

Castle Stageがあるのはちょうどメイン・ステージの反対側のはじっこ。この2、3時間ですっかり満員御礼となったフェス会場では、プロムナードを急いでステージ移動しているのはカメラマンと私ぐらいか(苦笑)このフェスティバルの観客は、近隣の中高生グループや家族連れが多くて、ライブを観るというよりは、地元の夏祭りにきている感覚。補導員の先生が見回りしてそうな雰囲気です(笑)だから目当てのバンドを見ようと急ぐ人なんて皆無なのです。

ともかく、小走りに人混みをすり抜けていくカメラマンの後を追っかけて、Castle Stageに到着すると、すでにトイのライブが始まっていました。


TOY

このCastle Stageは海沿いにあるSouthsea Castleの前の広場に設置されていて、青空の下、芝で包まれた丘の斜面やその上のお城の城壁から皆まったりとステージを楽しんでました。そんなのどかな夏祭りの雰囲気に全く似合わない黒タートル姿のトイ(笑)2年前のロンドンでのField Day Festivalでは観る事ができなかった彼らですが(その話はこちらで→)アルバムで聴いていたよりもロック色が強くてかっこいい!そして青空の下で彼らのサイケなグルグル感を満喫!ああ、気持ち良いっす。

それにしても、こんな青空の下でのんびりとサイケ・ロックを聴いていられるイギリス人って、やっぱり・・・

それからまた人混みをかき分けてメイン・ステージに戻り、次はフィールド・ミュージック(Field Music)。ちょっと疲れてきたぞ。

イングランド北部のサンダーランドからやってきた、フォーキーなねじれポップのフィールド・ミュージック。2006年にフューチャーヘッズのサポートで観た時よりすっかり大所帯になり、メイン・ステージに出演するほどメジャーになったのか?と思っていたのに観客はほとんどいませんでした(苦笑)


FIELD MUSIC

最近の彼らは、楽器の音はフォーキーなんだけど、実は意外と70年代プログレなのです。あんまり得意なジャンルじゃないんだよね、と思っていたら、やはりライブもそのままで、移動の疲れもあって「このままではエルボーまで体力が持たない・・」と、彼らの音楽を子守唄に昼寝してしまいました。ごめんね、Brewis兄弟・・・。


PETE DOHERTY

フィールド・ミュージックの次は、予定されていたジーザス&メリー・チェイン(THE JESUS & MARY CHAIN)のライブが中止となったため、急遽出演が決まった元ザ・リバティーンズ(THE LIBERTINES)のピート・ドハーティ(Pete Doherty)が登場。”急遽”にしては大物だな。

彼目当ての観客がぞくぞくとステージ前に集まる中に、バンドを引き連れて登場したピート。個人的にはザ・リバティーンズもピートにも興味がないので、彼を観るのは初めてでしたが、演奏はボロボロ、2、3曲終わるたびにに全員が集まって(たぶん)曲の相談をして、そしてピーターは寝っ転がったり、ギターを客席に放り投げる振りをしたり、ステージを降りてセキュリティのオッさんと踊ったり。やる気があるような、ないような、ラリってるような、振りをしているだけのようなライブが続き、そして終了時間を無視するピーターはマイクの電源を切られ、それでも歌っている彼をメンバーが止めてライブ終了。一部の観客は大歓声でしたが、うーん、私には「”予定調和を壊す”ための予定調和」に見えてちゃって・・・ダメだな。

そして次のスレイヴス(Slaves)のステージの前に場所を移動。というのも、このCommon Stageの片側には撮影用クレーンが設置されていてかなり邪魔だったので、反対側に移動してみたら、誰も考えることは同じですね。反対サイドはさらに大混雑でステージが見えない(苦笑)そんな中にさらに押し寄せてきたのは、なんとスレイブスのTシャツを来た10代前半の子供たち!こんな若い世代のファンもいたとはっ!確かにイギリスの新聞The Gardianに「親子で楽しめるファミリー・バンド」と評されただけのことはありますね(親の世代も子の世代も楽しめるという意味ですけどね。)今日はKIDSサイズのTシャツが正しい意味で売れてるなぁ。

そして会場では70年代パンクの名曲が流れ、21世紀生まれのティーンたちによるアンダートンズ(Undertones)の「Teenage Kicks」の大合唱が聴けるなんてイギリスのフェスならでは!

すっかりワクワク気分になってるキッズたちの前に登場したスレイヴス!ロンドン郊外・ケント出身のパンク・デュオの彼らですが、2013年にレディング・フェスの新人ステージで初めて観てから、気がつけばこれで4回目のライブ!(レディングの話はこちら→)こんな大きなステージでもLAURIEとISAACの二人相変わらずパワフルでシャープ!・・・でも、あんなに張り切ってステージ前に入り込んできたキッズたちが意外と静か・・・。いやいや、ライブによっては年齢制限があるイギリスなので、ほとんどライブ経験のないこの子たちに大暴れを期待してはいけませんね。


SLAVES

暴れたりしなくても、真剣にスレイヴスを観ていたキッズたちの中に、突然、奇声をあげて突入してきた一団が!全員刺青だらけの(おそらく)父ちゃん、母ちゃん、ハイティーン娘の家族連れみたいですが、スレイヴスでノッているならともかく、ただベロベロに酔って奇声をあげているだけ。ただ単にうるさい(苦笑)周りのキッズたちもすっかり困り顏。しょーもない大人のせいで、せっかくのSLAVESのライブが台無しになってごめんね。

とはいえ、「ハイ・ハットはどこだ??」とドラムの周りを探しまわって、「FUCK THE Hi-HAT!!」!短くてシンプルなハード・コア・ソングにキッズは大はしゃぎでした。


FRANZ FERDINAND

と、いう訳で、また元のサイドに戻って、撮影クレーンの隙間から観たのがフランツ・フェルディナンド(Franz Ferdinand)。

スパークス(Sparks)とのコラボ・ユニットFFSでのライブを除けば久々に観る彼らのライブ。日も暮れて、ライブらしい雰囲気の中、パンパンに集まった観客達は大合唱!でも、自分が意外に彼らの曲を知らないことにビックリ(苦笑)フェスなのに比較的新しい曲が多くて、1stアルバムぐらいしか真剣に聴いてないからしょうがないか・・・と思いきや、実は周りのイギリス人たちも初期の曲ぐらいしか知らない事が判明(笑)

フランツ・フェルディナンドも以前のようなポスト・パンク色がなくなり、ずいぶんメジャー系ロックな音に。ボーカルのALEXもプラチナ・シルバーの髪でイメチェンしてました(単に白髪隠し?(苦笑))とはいえ、久々に「Micheal」や「The Dart of The Marine」「This Fire」などの懐かしい曲もたくさん聴けて、単純に楽しかったけどね。

彼らのステージが終わると、いよいよお待ちかねのELBOW !

こんな懐かしバンドや大御所バンドが多数出演するフェスなので、セッティングの時間に流れる曲もちょっと懐かしめ。日が沈んだ後はBRIT POPのオンパレード!ブラーやパルプ、スーパーグラスなどなどで会場は大合唱。でもちょっと気になった事が。

英語が得意ではない日本人にとって、歌詞を真面目に読んでいない洋楽なんて、たまにフッと耳に入ってきた断片的な歌詞の部分しか歌えないものです。ところが、周りのイギリス人たちが歌っているのをよく聞いてみたら、実は同じように断片的な部分しか歌っていない?しかも歌ってる箇所は、私が歌えるところと同じ??実はイギリス人の英語聞き取り能力は私と同レベルなのかも!?(笑)

と、そんな盛り上がりの中で遂にエルボーが登場!メイン・ステージの前はパンパン!ボーカルのガイ・ガーベイのビール腹もパンパン(笑)


ELBOW

おなじみのELBOWのメンバーにストリングスが参加したフル・メンバー!しかも大トリですから、フェスのサブ・ステージに出演する時とは違って、ステージのバックに映像を使ったフル・セット!

今年にサプライズ出演したグラストンベリー・フェスティバルとほぼ同じセット・リストでしたが、定番「Grounds for Divorcevoce」をやらなかったのは驚きでしたが、代わりに懐かしの「Station Approach」(from 3rd album)や「My Sad Captain」(from 6th album)が聴けたのは嬉しい誤算。そしてニュー・アルバム「Little Fiction」の「Magnificent(She says)」までも観客が一緒に歌っていたのにビックリ。ああ、本当に人気バンドになったんですねぇ。


ELBOW

そんなビッグなバンドになっても、ガイ・ガーベイの飄々とした雰囲気は相変わらず。11年前に観た時と同じように「Are you still OK?」と繰り返し観客に訪ね、ビールの一気飲みを要求する観客に「お前達はアニマルだっ!」と苦笑。

でも前回のライブでは彼のマンチェスター訛りがなかなか聞き取れなかったのに、今回はなぜかすんなりと理解できる!BBC6ラジオで番組のMCをやっているので、それで北部訛りが少し和らいだ?それともイングランド南部でのライブで気を使っている?

そして前回のライブでは、小学生ぐらいの男の子が最前列に張り付いて全曲一緒に歌っていて「この年齢でエルボー!?渋すぎないか!?」とビックリしましたが、なんと今回も最前列に張り付く小学生軍団を発見!エルボーは小学生達のアイドルなのかっ??

エルボーの曲なんて基本的にはプログレでしょ?(ウチの旦那に言わせると「ほとんどピーター・ガブリエル時代のジェネシス」。)イギリス人にはサイケだけじゃなく、プログレの血も流れているのか?(先にプログレが苦手だと書きましたが、おそらくフィールド・ミュージックは曲の構成がプログレなので苦手、エルボーは音の作りがプログレだから平気なんじゃないかと勝手に分析しています。)

とはいえ、大人の間でギューギューに挟まれている小学生達はかなり大変そう。がんばってくれ!君たちが柵前にいてくれるから、私もステージが見えるんだよっ!と、心の中で彼らを応援(苦笑)そして彼らに気がついたガイ・ガーベイも、大喜びで手を振っていました。

ところで、今回のライブに備えて、一夜漬けで何曲かエルボーの歌詞を暗記しましたが、その時に改めて感じたのがエルボーの歌詞の美しさ。酔っ払った勢いで(たぶん)プロポーズしちゃって向かい酒を煽るダメ男や、浜辺で拾った小さなガラス瓶に世界を感じている女の子、そんな世界の片隅の人々を詩的でロマンチックに描いたエルボーの歌詞に今更ながら感動してしまいましたが、ライブの最中も、街角にたむろする若者たちにノスタルジックな思いを重ねる「Lippy Kids」を一緒に歌っていたら、不覚にも涙が・・・。もちろん歌詞だけでなく、あのビール腹のオッさん(笑)から生まれる美しいボーカルとメロディーもしっかりハートに染み込んできました。

11年前のようなエクスペリメンタルな音作りやハードさは薄れたけれど、新たに優雅さが加わって、そしてこのエルボーの女々しさがやっぱり大好きだなぁと改めて感じさせてくれました。

観客にウェーブをやらせたり、さすがフェスの常連エルボーは観客をうまく盛り上げます。そしてそんな観客を見て「BEAUTIFULl !! You are BEAUUUUTIFUL !!」と連呼するガイ・ガーベイ。ラストは「One day like this」のいつまでも終わらない大合唱。ああ、本当に良いライブでした。

大歓声の中でライブが終わり、時計を見てみたら、うわっ、11時過ぎてるよっ!だからライブの最中に帰っていく人たちがいたのね。ツアーバスにしなくて良かったよ。


終わったのは11時過ぎ

皆がなんとも穏やかな笑顔でフェス会場を後にしていく中、ホテルの部屋へ帰り着くと、あれっ?TVが壊れて動かないよ!しょうがないのでBBCラジオのアプリを立ち上げて6Musicに合わせると、ちょうどガイ・ガーベイの番組の時間でした(笑)引き続き彼のマンチェスター訛りを聞きながら眠りについたのでした・・・。

こんな感じだったVIictorious Festival。海と緑を感じながら(天気が良ければ)最高に気持ちが良いフェスティバルです。ただ、音楽を聴くためというよりは、地元のお祭り気分で来ている観客が多いため、純粋にライブを観たいという目的の人にとってはちょっと違和感があるかも。でも、ほどほどなメジャー色で皆んなが楽しめて、なによりもこんなにイギリスらしいバンドが揃ったフェスは最近では珍しいぐらいなので、とても良いフェスティバルでしたよ。

ちなみにロンドンへの帰路は高速バス(National Express)を使いましたが、時間はほとんど鉄道利用と変わらないのに、料金は半額以下。のんびり田舎の風景を見ながら爆睡しているうちにロンドンに到着。はっきり言って、ビクトリア駅からの列車よりずっと快適!しかもバス乗り場がフェス会場のすぐ近くにもありますので、このフェスに行かれるなら高速バスもお勧めですよ!

August/2017

Victorious Festival at Portsmouth 27(Sun)/August