1/MAY/2016■ Mark Lanegan ■ at Leeds City Varieties
ロンドン旅行で何か観られるライブがないかと探していたウチのダンナさんが突然、
「うわぁぁ!マーク・ラネガンのライブがあるぅぅ!」
と、絶叫。
90年代にニルヴァーナを中心として盛り上がったグランジ・ブーム。その中でちょっとマイナーだったワシントンのバンド、スクリーミング・ツリーズ(Screaming Trees)と、そのボーカルのマーク・ラネガン(Mark Lanegan)。彼が大好きなダンナさんは2011年に行ったイギリスのラティチュード・フェスティバル(Latitude Festival)でも、ベル&セバスチャンのイソベル・キャンベルとのライブを観て狂喜していましたが(そのライブはこちらのページで→)、今回もロンドンのユニオン・チャペルでライブがあると知って大興奮。
ところが!チケットはすでにソールド・アウト。彼のUKツアーの日程を調べてみると、なんと偶然にもLive at Leedsフェスティバルの翌日がリーズでのライブじゃないですか!
「でも、どこのチケット・サイトでもチケットが売ってないんだよぉ。もう売り切れちゃったのかな。」と、ダンナは落胆しまくり。
「売り切れならば『SOLD OUT』と書いてあるはずだよ。きっと最初からチケット・サイトでは販売してないんだ。会場のBOX OFFICEで売ってるかも。」
まだインターネットも無い時代、イギリスで(特に地方の)チケットを買うには、まずは会場のボックス・オフィス(チケット販売所)に問い合わせたものでした。今回のライブ会場のVarietiesのサイトを見ると、おおっ、ネットでチケット売ってる!おおおっ!マーク・ラネガンのチケットも販売しているじゃないのっ!しかもほぼ売り切れ寸前なのに、上手い事に15列目の隅っこで2席空いてるよ!
「それでいい!早く買って!!」と、ダンナが焦るので、
「ここでいいの?ダンナだけ1席残っている前の席にすれば?」
「別に前じゃなくても良い・・・」
という訳で、その2席のチケットを無事注文できました。
そしてライブ前日は「Live at Leeds」をヘトヘトになりながらも満喫して、リーズに1泊。
翌日は、ライブまでの時間を潰したいけど、さすがに3度目のリーズ(ダンナは2度目)では観光する場所もないので、ここは少し遠出して、「嵐が丘」の舞台に行ってイギリス文学に浸るか!なんて意気込んでいたら、あいにくの雨模様。なので、予定を変更して久々にマンチェスターに遊びに行く事にしました。
駅で往復チケットを購入し、3両ぐらいしかないローカル列車にのって1時間ちょっとでマンチェスターへ。ところが列車は満員で、しかも途中駅でも次々と人が乗り込んでくる。そして乗ってくる人々がやたらと赤い・・・マンチェスター・ユナイテッドの試合があるのかぁ!
案の定、到着したマンチェスター・ピカデリー・ステーションはどこもかしこも真っ赤(笑)しかも10年振りのマンチェスターは一段と再開発が進んでいて、どこがどこだか分からない・・・
でも、80年代後半の「マッドチェスター」ブームを発信したオールドハム・ストリートは面影が残ってる。レコード屋巡りに行ってしまったダンナは置いておいて、私は以前TVで紹介されていた壁画を探しに。モリッシーやイアン・ブラウン(ストーン・ローゼス)ジョージ・ベストなどのマンチェスターのアイコンを描いたモザイクがどこかにあるらしいんだけど・・・。ファッション・マーケットの「アフラック」の壁だと思ったのに見当たらない。
ようやく見つけたモザイク壁画
近所をウロウロしても見つからず、諦めようかと思ったものの、いやいや、折角なんだから探してみせるぞ!と、ダンナがCDを漁っていた「ビニール・エクスチェンジ」の店員さんに聞いてみたら、「ああ、あのモザイクね。確か・・・」とネットで検索してくれました。
結局、場所は「アフラック」ビルの裏側でした。近所で働く人は知らなくても、意外にも観光客らしき人たちが写真を撮っていました。そういえばレコード店でもイタリア人やアメリカ人が大勢レコードを漁っていたし、「マンチェスター・ロック・メモリアル巡りウォーキング・ツアー」なんてチラシがあったりして、実はマンチェスターはロックの聖地的存在になっているのかも?
「いかにも」な感じの裏通りにある劇場
そんなマンチェスターから戻り、マーク・ラネガンのライブ会場Leeds City Varietiesに向かいました。
リーズのメインのショッピング・ストリートから一本入った路地裏にある劇場ですが、こんな裏通りの劇場にしては入り口はガラス張りでとてもモダン。しかし一歩中に入ると、階段は重厚な絨毯が敷き詰められた年代もの。タキシードの姿のセキュリティたちに挨拶されながらホールに入れば、うはぁ!ビクトリアンな装飾がほどこされた壁に、赤いベルベットでこれまたビクトリアンな木製の折りたたみ椅子。小さいけれど、そのクラシカルな内部にビックリ!
ウィキペディアによると、このVarieties劇場は、ビクトリア時代のミュージック・ホールがそのまま保存されている貴重な劇場で、イギリスの「指定建造物2*級(Grade II* listed )」という「建築上および歴史上重要な建造物」として指定され、かのチャップリンや喜劇王キートンもこの舞台に出演したのだとか。
劇場内には小さなバー・カウンターがあったり、アイスクリームの売り子がいたりと、昔ながらの劇場の雰囲気が良いなぁ。
この日はなんとサポートアクトが3つも登場。「なんで3つも!?」と驚くと、「バックバンドのメンバーがそれぞれ演ってるバンドが演奏するんだって。」なんだそりゃ??
ライブの様子は撮影しなかったので、劇場の雰囲気だけでも。
開演時間になって観客が席に着くと、次々とサポート・アクトのライブがスタート。すべてのバンドは基本的にバリバリなアメリカンなカントリーというか、ブルースというか・・・ううう、苦手だぁ。
この劇場は珍しいことに客席の床に傾斜がないのですが、代わりにステージの奥までよく見えるようにということなのか、ステージの床が客席に向かって傾斜しているのです。だからステージで演奏する人たちが「なんだか奇妙だね」と戸惑っていました。
クラシカルな会場でマーク・ラネガンを味わう
そしてようやくマーク・ラネガンが登場!そして当然、先ほどまで入れ替わり立ち代りと演奏していた人たちも登場。
マーク・ラネガンの地を這うような低音ボイスに、ドラム抜きのスロー・テンポのカントリー・ミュージック。シンプルに全員が並んだだけのステージはなんだか時代を錯覚してしまいそうなほど劇場にマッチして、すげえ良い雰囲気なんですが、私はどうしてもこういうアメリカン・ロックが苦手。ならば、なぜマーク・ラネガンを?と言わそうですが、普段の彼の音楽なら平気なんですが、ドラムがいないとこんなに睡魔が襲ってくるなんて・・・。
しかし周囲の観客はその圧を感じそうなほど、マーク・ラネガンの音楽に聞き入ってる。観客のほとんどは40代以上のちょっとインテリっぽい方々で、コアなファンが多いんだねぇ。その中で睡魔と戦う私・・・
と、マーク・ラネガンのライブ・レビューを期待して、このページを読まれた方にはごめんなさい!ともかく、ライブはほとんど記憶がないものの、こんな歴史的な劇場を偶然にも訪れる事ができて、その空間とマーク・ラネガンの音楽が醸し出すなんともいえない時代がかかった場末感はたまらなく面白かったです。