シリア・ヨルダン旅行 2006年7月
ーアラビアのロレンスを巡って、初めての中東ー
7月21日 part 1/クラック・デ・シュバリエへ
朝8時、頼んでおいた車が迎えに来てくれました。8人くらい乗れるワゴン車だったので、荷物を乗せても私たち2人ではゆったり過ぎるくらい。ホテルのスタッフが荷物を運んでくれて、ドライバーのニイちゃんに今日のルートなどを説明してくれました。
金曜日はアラブ世界では休日なので(金・土が休日)朝のダマスカスは静かで、車もほとんど走っていません。すぐにハイウェイに乗り、またしても120キロくらいのスピードで北に向かって一気に走っていきました。しかしシリアのドライバーは、誰もがフツーにパッシングしてくるので、毎日ヤンキー車に乗っているかのようにドキドキの連続でした(苦笑)

白さが眩しいクラック・デ・シュバリエ
窓の外の風景は砂漠というより荒野の様で、赤茶色の低い山と岩だらけの大地が続いていました。でも、ところどころに木も植えられて、意外と緑もあります。
トルコ国旗をつけたトラックの一団とすれ違い、大勢を乗せた乗り合いバスや、ヘルメットもつけずに古いバイクに2人乗りしたニイちゃん達が追い越していく。トラックの荷台に乗った子供たちが私達を見つけて恥ずかしそうに笑いかけてきます。ああ、のどかだなぁ。

城から眺めるシリアの田園
今回のドライバーのニイちゃんもあまり英語は喋れないみたいで、気を使ってくれるけど、とても無口。しかし運転中はずーっと携帯電話をしてる・・・というか、こんな砂漠の中で携帯が通じるの!?出発前に心配していた母親に電話をかけてみると、お〜っ!繋がるね!ボーダフォンっ!!しかし、日本の自宅でも時々アンテナが立たないのに、こんなシリアの砂漠の中でアンテナ総立ちだなんて、なんだか理不尽!?
そのうちに車はハイウェイを離れ、細い田舎道に入っていきました。ニイちゃんが指差す小高い丘の頂上に石造りの城が見えてきました。
「あれがクラック・デ・シュバリエ?」
うんうん、と頷くニイちゃん。
急な斜面に家々が立ち並ぶ小さな村、その中の曲がりくねった細い道をぐんぐんと上がっていきます。
「ロレンスはこんな山の上まで歩いていったのかなぁ?」
なんて想像していると、クラクションを鳴らされた子供達が笑いながら車を避けて走る。日本の昔の風景みたいだなぁ。
ダマスカスから3時間ほどでクラック・デ・シュバリエに到着。クラック・デ・シュバリエは、この地域でもっとも良い状態で残っている十字軍のお城で、T.E.ロレンスも大学時代に十字軍の城の研究旅行で訪れています。現地では「カラート・アル・ホスン」と呼ばれ、ロレンスも母親への手紙に「カラート・アル・ホスンは世界でもっとも素晴らしいお城」と書いていました。

中はこんな感じ
「2時間くらいでいいかな?ゆっくり見ておいで」と、ニイちゃんに言われて車を降りると、途端に物売り達に囲まれました(苦笑)
「後でね」と彼らをやりすごし、入場料を払って中に入ると、いきなりオジさんが頭から血を流していてビックリ!どうやら足元の石畳に滑ってケガしたみたい。石の階段はすり減って滑り易くなっていて、観光地としての整備はあまりされていない様でした。
回廊を抜けて中庭に出ると、お城の全体がよく見えました。曲線と直線の組み合せが美しく、その白い外壁が真っ青な空に映えて鮮やか。


見事なアーチ天井の回廊
意外にも観光客で賑わっていましたが(ほとんどはアラブの国の人達でしたけど)、案内板などがほとんど無くて、ガイドのいる団体客にくっ付いて周ろうかと思ったものの、こっちはスペイン語、こっちはアラビア語・・・これじゃ分からないよ(苦笑)ガイドブックの地図を頼りにあちこちと散策しましたが、しかし有名なアーチ状の天井がある廊下が見つかりません。タバコを吸ってたむろしている現地の子供らしきグループに聞いてみると、とっても流暢な英語で、延々とお城の歴史を一方的に説明されました(苦笑)
やっと見つけた廊下は想像より小さくて、でも装飾がとても凝った造りで綺麗。
そして隣のホールでは何かの会議をやっていて、TV中継までしてました。出席者用なのか、臨時のトイレが並んでいたので「使っていいのかなぁ」と覗き込むと、管理をしているらしいオジさんが「いいよ、使いな」と手招きしてくれました。一緒に使わせてもらったダンナがチップを渡そうとしたら、「いらないよ。これは俺の仕事なんだからさ」と言われたんだって。いいオヤジだなぁ。
ロレンスはこの地域の4〜50カ所の城を調査して、それまで言われていた「十字軍の城はアラブの築城法に影響を受けた」という定説をくつ返したそうです。この城でも数日を過ごして研究したそうで、彼ほどの知識があればもっと楽しかったかも。それでも2時間はあっという間でした。
外に出ると、「『後で』って言ったよなっ!!」と、物売り達がドドッと集まってきました。ちっ、覚えていたか(笑)
その後はドライバーに連れられて隣のレストランに行き、店を走り回る猫と戯れながら昼食を食べました。おいしいケバブでした。

アラブの猫はみんな美形