2度目のシリア旅行 2007年7月
ーアラビアのロレンスを巡って、再度中東へー

7月22日 part 1 / ラタキアへ サラディーン城訪問

今回のシリア旅行で行きたかったところ。それは地中海とユーフラテス川です。え?そんなモンが見たいのかって?だって、歴史や地理の授業でさんざん暗記させられたのに、実物を見る機会なんて滅多にないじゃないですか?だったら「どんなモンか見てやろうじゃないのっ!」って、思いませんか?

そんな訳で、今日はまず地中海へ!まずは地中海に面した都市ラタキアに行き、そこからタクシーでサラディーン城、そして列車でアレッポに帰る予定です。

サラディーン城は、十字軍と戦ったアラブの英雄サラディーンのお城です。ロンプラによると、ロレンスはこの城を「自分が見た中でもっともセンセーショナルな城」だと表現していたそうです。そりゃあ、見逃せませんなっ!もっとも、何がセンセーショナルなのか、私には分からないだろうけど(苦笑)

そして、ラタキアとアレッポを結ぶ列車にも乗ってみたい!シリアは大きな都市間を結ぶ鉄道網がありますが、あまり一般的な交通手段ではありません。本数がとても少なく、長距離バスより時間がかかることもあるからです。しかし、この区間の車窓の風景は一見の価値があると、あちこちで書かれていたので、やや鉄っちゃん(鉄オタ)な血が流れる私としては、それも見逃せない!

しかし、アレッポ発の朝の列車は7時が最後。当然、目が覚めた時にはすでに間に合わず、ラタキアへはバスを使う事にしました。

朝食をとっているとワリダさんがいたので、明日のユーフラテス川へのツアーをお願いしました。
「今日のサラディーン城もツアーを組んであげるよ?」
う〜ん、ラタキアまでの片道ツアーとなると割高だし、やっぱりバスとか公共交通機関も使ってみたいんだよね。
「じゃあ、バス・ターミナルまで送ってあげるよ。」

バス・ターミナルに着くと、ワリダさんがチケットを買ってきてくれました。
「ラタキア行きのバスはこれだそうだよ。45分後に出発だから。でもこれで大丈夫?」
う〜ん、かなりボロボロのミニバスだ。でも覚悟の上です(笑)


サラディーン城に行くんですよ

ベンチでロンプラを読んでいると、隣に座っていた男性が興味深々に本を覗いている。
ラタキアのページを開いて「私達はここに行くんだよ」と手振りで言うと、 「ああ、じゃあこのバスだね」という感じの手振り。そうそう!この人はどこに行くのかな?え〜っと・・・
「ハドゥレタック?イッラー・フェーン?(あなた、どこへ?)」
と、たどたどしく言ってみると、
「タルトゥース!」
お〜っ、通じた?タルトゥースはラタキアの近くの港町だ。その街と、近くのマルカブ城(これもロレンスが賞賛してた(苦笑))も行きたいんだよねー・・・なんてトコまでは、アラビア語で言えません。

そんなコトをしている間に出発の時間になりました。ほんとにガタガタのバスで、椅子のスプリングもボロボロ。ハイウェイで時々バスが故障して立ち往生しているのを見たけど、そんなコトにならないでね。しかしそんなバスでもダンナは熟睡。

ラタキアまでは3時間半。今日のバスは西へと向かっていきます。最初はいつもどおりの荒涼とした砂漠の中を走っていましたが、幾つもの赤い山を越えていくと、ある所から景色が一変し、周りの険しい山々が一面緑の木々に覆われました。え〜っ?こっ、これがシリア!?と、言いたくなるほどの日本と変わらない程の緑豊かな土地。シリアは奥が深いぜっ!

かなりおしりが痛くなってきた頃、ようやくラタキアに到着しました。道路脇のバス停には大勢のタクシーが待ち構えていて、また、あっと言う間に取り囲まれした。え〜いっ!うるさ〜いっ!私達は駅に行くのっ!運転手たちを振り払って、街の方へ歩き始めました。

バスの乗客だった男性が同じ方向に歩いていたので駅を聞くと、「鉄道の駅?そっちに行くからついてこいよ」と、言ってくれました。少し英語ができる人だったので、あれこれ話すと、「俺はラタキアに住んでいるけどクルド人なんだよ」と、教えてくれました。トルコやイラクのニュースでよく聞きますが、シリアの東北地域にもクルド人の居住区があります。そこの出身なのかな?
「俺は日本の自動車会社で働いているんだぜ。」
「え?どこ?トヨタ?」
「ちがうな。マツダだ。」
ラタキアにて、マツダで働くクルド人とお話し。不思議な巡り合わせでした。


当時の巨大さを感じさせるサラディーン城の跡

そして駅に着くと、なんだかひどく殺風景。時刻表もないし・・・と、思っていると、駅の遥か向こうに青い海が見えた!あっ、あれが地中海?!・・・と、喜んでいる場合ではなく、早く用事を済ませて、お城に行かなければ。

その時、午後1時でしたが、事前にネットで時刻表を調べた時は、アレッポに戻る列車は3時と6時しかなかったので、3時は間に合わないし、6時では暗くなってしまいます。風景は見られないだろうとほぼ諦めていました。しかし窓口で聞くと、ほぼ1時間おきに列車がありました。5時台の列車のチケットを買おうとすると、並びの席がない?そんなに満席になるのか。しょうがないので前後の席で購入しました(オンラインじゃなく、昔ながらに紙の座席表を書いていました。)

「次はあっちの窓口に行きなさい」と言われ、一番端の窓口でパスポートを見せました。シリアを公共交通機関で移動する時は常にパスポートを要求されます。「自分達の行動がすべて把握されてるみたいだね」と、ダンナ。独裁国家ならではってコト?

帰りのチケットも購入したので、次はサラディーン城へ。城までのバスはないので(近くの村からも6kmほどあるらしい)駅前でタクシーを捕まえました。でもロンプラのページを見せると、「勘弁してくれよ」と断られてしまいました。えっ、そんなに遠いの?

次に捕まえたタクシーにロンプラを見せると、今度は行ってくれるそう。
「ラタキア、城、サーア(1時間)、ラタキア!ビカム?(いくら?)」
「う〜ん」と、運ちゃんが紙に書いた金額は1500SP。
そんなモンかな。よしっ!!

ところが、このタクシーの運ちゃんはサラディーン城へ行ったことがなかったらしく、あちこちで道を聞いてます。おいおい(苦笑)小さな村を通り過ぎると、突然、木に囲まれた細い山道に変わりました。車がすれ違えないほどの細い道で、うねうねと曲がっている。おまけにすんごい急な角度で登ったり降りたり(汗) ロ、ロレンスはこんなトコを歩いていったのっ!?

そんな山道をしばらく走っていると視界が開け、向こうの山の頂上に突然サラディーン城が現れました。
「うわ〜っ、すげえっ!」「なに、これ〜っ!」
まるでペルーのマチュピチュ遺跡の様に、うっそうとした緑の山に囲まれた険しい山の頂きに広大な城跡が。うわぁ〜こんなすごいモンだったとは!!


サラディーン城

そこからまたしばらく山道を下り、巨大な石柱の間を通り抜けて、崖の下でタクシーは停まりました。どうやらその上にお城があるみたいだ。
運ちゃんに「1時間ね!」と念押しして、お城に向かいました。

階段をひたすら昇り、山の上に着いて入場料を払って入ると、中はたいして遺跡が残ってませんでした(苦笑)しかし、険しい緑の山々に囲まれたこの城はまさに「天空の要塞」といった感じ。岩に足をかけ、遠くの山々を眺めていると、気分だけはサラディーン。カッコい〜(笑)「地球の歩き方」には写真が載っていたけど、それからはとてもこの城の姿は想像できない。


サラディーン城からの眺めは最高っ!!

ロレンスの言葉につられてフラフラとこんなトコまで来てしまったけど、すごいっ! 日本からのツアーではまずこの城には来ないけど、シリアを旅行するならぜひお勧め!一見の価値あり!

と、お城は大興奮だったのですが、ところが待っていてくれたタクシーの運ちゃんとラタキアに戻ると、彼がいきなり最初の料金じゃ足りないと言いだした。
「なんで!?ちゃんと自分で1500SPって書いたでしょ!」
と、メモを見せても、
「あそこで1時間も待つなんて聞いてないから追加料金がいる!」
とか言っている。ちゃんと言ったつもりだぞっ!だったらお城で待っていた時に言えよっ! 確かに自分でも予想外の難路だったから多少のチップは出すつもりでいたけど、その額でも「足りないっ!」と言ってくる!

アラビア語で一方的にまくしたてられ、も〜っ、うるさいっ!面倒くさいっ!金が欲しきゃ持ってけっ!ってな気分になってしまい、結局2500SPも払ってしまいました(涙)く〜っ、ムカっ腹が立つ〜っ!
「少しは加勢してよっ!男が言った方がマシだったかもしれないのにっ!」
「え〜っ?だってよく分からなかったし。」
「だ〜っ!腹立つ〜!」
と、勢い余ってダンナに八つ当たり(苦笑)夫婦での旅行って、必ず喧嘩になるよね。

「で、これからどうする?まだ1時間あるから海を見に行く?」
も〜どうでもいいよっ!プンプン!
と、言いながらも地図を見てみると、海は駅から左の方角にある。
「え?でも駅の後ろに海が見えてるよ?」
だって地図がそうなってんだから、しょうがないでしょ〜っ!プンプン!
「じゃあ、そっちに行ってみようか?」

とは言うものの、駅の前が巨大なロータリーで大小何本もの道が合流していて、どれが海に向かう道なのかさっぱり分からない。
「誰かに聞けばいいよ」とダンナ。
「ほとんどのアラブ人は地図が読めないそうだから、間違ったことを言われるってよ(プンプン)」
「でも、こうしていても分からないしさぁ。」
と、ダンナが近くにいた道路工事の人に地図を見せると、みんなが集まってきて、あっちだこっちだと言うけど、マジに誰も分らないみたい。シリアの人達は根はイイんだけどね(苦笑)

英語が話せる人がなんとか道を教えてくれたけど、案の定、歩いて行くとさっぱり分からなくなってしまった。
「たぶんこっち」「ここで曲がってみよう」
と、ダンナの勘についていくと、
「あったよ!ほら、地中海だ!」
あっ、青い海だ!地中海だぁぁ!・・・でも、巨大なタンカーや倉庫があって、フツーの港?想像と違う・・・。

だって、高校生のロレンスがフランスを自転車で旅行して、初めて地中海にたどり着いた時の手紙で、
「この先には夢見た国々がある。ギリシャ、イタリア、エジプト、シリア・・・ついに手の届く所にまで来たんだ。このまま明日、旅立ってしまいたい」
なんて書いていたんだよ。なのに、こちらから見えるのはタンカーだなんて・・・私が求めた地中海じゃない〜っ!ロマンチックな妄想し過ぎとはいえ、あんまりだぁ〜。
「まだ少し時間があるからもっと近くに行ってみる?」
ううん・・・きっと近くに行っても味気ない港だよ。

トボトボと駅まで歩いて帰りましたが、足はクタクタ、街はつまんないし、海が近いせいか、とにかく蒸し暑くて汗がダラダラ出てくる。ラタキアのバカヤロ〜っ!(と、ついにラタキアにまで八つ当たり(苦笑))でもね、街から離れるときれいな海岸があったみたいです。またの機会にはちゃんと廻ってみたいな・・・。

T.E.ロレンスを巡る旅

July / 2007 2度目のシリア旅行

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