2度目のシリア旅行 2007年7月
ーアラビアのロレンスを巡って、再度中東へー
7月21日 part 2 / カラート・サマーン
ホテルに戻ると、ワリドさんから、「カラート・サマーンのツアーだけど、女性一人、一緒に行っても構わないかな?」と、聞かれました。それは別に構わないですよ。
「そう!ありがとう!じゃあ4時にここに集合で。」
と、別れようとした時、あっ、そうだっ!ロレンスの部屋っ!
「ワリドさん、ロレンスが泊まった部屋を見せてもらえるって聞いたんだけど。」
「ああ、いいとも。でも今は泊まっている人がいるから、空いたら見せてあげるよ。」
おっ、そうそう!それから、ロレンスのレシートも見なきゃ!玄関ホール横にあるラウンジに行くと、壁の中のガラスケースに、ロレンスが宿泊した時のレシートがありました。と言っても、別にロレンスのサインがある訳でもないけどね。その横に置かれたロレンスの書簡集には、「この美しいバロン・ホテルにまた滞在しています」という彼の一文がありました。他にも当時のバロン・ホテルの写真があって、またしばしロレンスな世界に浸ってしまいました。
約束の時間にラウンジに行くと、「彼女が一緒に行くから、よろしくね」と紹介されたのは、1人でシリアを廻っているというボーイッシュな雰囲気のオーストリア人女性でした(とりあえずMさんと呼びます。) そしてワリドさんの車でホテルを出発、1時間ほどで、小高い丘の上にあるカラート・サマーンに到着しました。

カラート・サマーン
5世紀にシメオンという人物がこの場所で40年間瞑想していて、しかも邪魔されないよう18mの高さの柱の上にいたそうです。そんな彼の説教を聞きに大勢の人々がこの地を訪れ、そして彼の死後、ここに当時世界最大の教会が建てられたそうです。
「ここはキリスト教徒にとっては、イスラム教のメッカと同じくらいに重要な場所なの。」
と、Mさんが教えてくれました。
すでに柱はなく、天井などかなり崩れてしまっていますが、それでもクリーム色の石造りの巨大な教会は荘厳でした。そしてその教会からは周りの風景が一望できて、低い山々と赤い大地は「遠くにきたなぁ」とシミジミ感じさせられます。

中はこんな感じ
そして教会の反対側にも小さな建物跡があり、そこで研究グループらしき白人の男性たちが測量などをしていました。その中の一人が、ここは元々の正門なのだと教えてくれました。当時、キリスト教徒以外はこの正門の中の小さなプールで洗礼を受けてから教会に入ったんだそうです。
今みたいに私達が、モスクでも教会でもホイホイと観光するのに比べれば、厳しかったんだな、と思う反面、今の宗教対立の世界から見ると、おおらかさも感じます。
係員に「もう閉門ですよ」と呼ばれ、外に出ると、休憩所でMさんが白人の年配カップルと話しをしていました。あれっ?あのカップルはアレッポのスークで見かけた気がする・・・。みんな同じような行動してるんだなぁ。

カラート・サマーンから眺めるシリアの荒野
「時間があるなら、近くの他の遺跡もまわろうか?」とのワリドさんの提案。時間なんて、いくらでもありますよ(笑)
それで、次に行ったのは小さな教会跡と、ローマ時代のお墓の跡でした。
教会跡では、そこに居た地元の男性が私のカメラに気付いて、ベスト・ショットなスポットを案内してくれました。しかしそれは、崩れた岩の中にある飾り彫刻やシンボルだったので、ちょっと油断していると、足を踏み外して岩の狭間にズドンと落ちてしまう。いてて(涙)やっぱりシリアはリゾート・ファッションでは来られない。
そしてローマ時代のお墓は、岩壁に墓穴を掘った珍しいものでした。彫刻も一緒に彫られていて、こんな遺跡が車の通る道路の脇にあるなんて。ヤギも放牧されていて、足下はフンだらけだし(苦笑)シリアの遺跡はあちこちに無造作にあるんだよね。
最後に立ち寄ったのは、比較的良い状態で保存された小さな教会跡でした。
「この教会に1日滞在するためだけにアレッポまで来た人もいるんだよ」
と、ワリドさんに言われたけど、何がそんなに引きつけるのか、私には分かりませんでした(苦笑)
「夕日が沈むまでここにいてもいい?」と、Mさんの希望で、この教会の横の丘でしばらく休憩しました。
「私、日の出と日の入りを見るのが大好きなんだ」と、Mさん。
何もない赤茶けた大地と山の向こうに、ゆっくりと沈んで行く真っ赤な太陽を、皆でボーッと見ている不思議な時間。そして日が完全に隠れると、Mさんが、
「イヤッホ〜!バイバ〜イ!また明日ね!」
確かにそうだ(笑)また明日〜っ!
帰りの車は3人とも爆睡状態でした。ホテルに着いた時は(当然)もう真っ暗。Mさんとはここでお別れ。彼女は他のホテルに泊まっていて、他の旅行者に「カラート・サマーンに行きたいなら、ワリドさんに相談するといい」とアドバイスされてバロン・ホテルに来たところ、ちょうど私たちのツアーが予定されていたのだそうです。不思議な偶然だったんだね。

夕日に染まりだすカラート・サマーン
「夕食が、前に行った立ち食いのサンドイッチ屋にいく?」と、ダンナ。でも、昼食もチーズとかタイムをのせて焼いたホムス(丸いナンみたいなパン)を立ち食いしたからなぁ。夕食はちゃんとした食事がしたい。なので、そのサンドイッチ屋さんの近くにあった大衆食堂っぽいレストランに入って、ダンナはケバブ、私はチキンとライスを注文しました。私のには豆のスープもついてきて、「あっ、美味しそうだな。そのスープも。」と、ダンナがちょっと羨ましそう。うん!美味しいよぉ。
そしてホテルでゆっくり湯船につかって、もう爆睡・・・。