シリア・ヨルダン旅行 2006年7月
ーアラビアのロレンスを巡って、初めての中東ー
7月25日 part 2/「アラビアのロレンス」の砂漠ワディ・ラムへ
「砂漠」と聞くと、砂丘のような一面の砂の風景を想像しますが、ワディ・ラムは、浸食されて不思議な形をした岩壁や、マーブル模様の岩肌を見せる巨大な山々があちこちに見られ、地面も赤や白、ベージュとカラフルな表情を見せる砂漠です。ロレンスの本を読んでいても、ラクダの足を痛めるような岩地や、ロレンスがよじ上った岩山の風景がイマイチ想像できなかったけど、実際に来てみて、やっと彼が書いた「砂漠」が分かりました。

ワディ・ラム
最初に訪れた巨大な天然の石の橋では、足下がサラサラの砂地。ダンナと2人で砂に埋まりながら上っていくと、うわぉ!見晴らしが良い〜!通りがかったジープから陽気な観光客たちが手を振ってました。
下に降りると、ちょうどそのジープが到着したところで、真っ赤に日焼けしたフランス人の一団は、「どこから登ってたの??」と、大騒ぎしながら、橋をよじ登っていきました。
それから山の谷間を利用した小さなダムによじ登り、いやぁ、意外とハードな観光だ(苦笑)

岩があればよじ登る
そしてムハマド君は4WDの2本のギアを操りながら、砂地を乗り越えていきます。でも時には砂にはまって止まってしまい、
「お兄さんに運転を教えてもらっているんだけど、まだ半人前だね」
なんて苦笑いしてました。
「ファティマも運転してみる?」
なんて言われ、いやぁ、私が運転したら、進む前に砂に埋もれそう。

砂の上にラクダの足跡
そして、突然車を止めたかと思えば、木の実をたくさん取って来てくるムハマドくん。それは小さな野生のイチジクで、栗くらいの大きさしかないけど、味はしっかりイチジクで、おいしかったぁ。
そして、少し日が傾いてきたので、サンセット・サイトに連れて行ってくれました。すこし小高い丘になった砂地を4WDで一気に登っていき、その丘の上で赤く染まっていくワディ・ラムを眺めていると、こんなトコに自分がいるなんて、数ヶ月前には考えもしなかったなぁ、なんて、不思議な気分でした。
と、夕日を見終わった所で、ワディ・ラムには、映画撮影に使われた「ロレンスの泉」を呼ばれる場所があるので、そこは行かないのかとモハマド君に聞くと、
「さっき見たよ。泉を見たでしょ?」
えっ!?さっき、よじ登った小さいダムのこと?なんか違う気がするけど・・・まぁ、いいか。別に実際のロレンスには関係ないんだし、見た人達の旅行記でも「映画に出てきた記憶がない・・」と書かれているし・・・
そしてこの夜は、モハマドくんの家のテントに泊まりました。フツーのキャンプ用テント(ボロボロだけど(苦笑))と、大きなベドゥイン・テントがあって、どちらでも好きな方を使って良い、と言われ、そりゃあ当然ベドゥイン・テントだよね。

さ〜ばく〜に陽が落ちてぇ〜♪
ムハマド君がチキンの炊き込みご飯を持ってきてくれ、それを食べていると、次々と車がやってきて、何かと思ったら、彼らは独立して家を出ていたモハマドくんのお兄さん達。そして砂漠の中でたき火を囲んだ宴会が始まりました。
と言っても、お酒を飲む訳じゃなく、甘〜い紅茶(モハマド君曰く「ベドゥインのウイスキー」)を飲みながら、英語が上手なお兄さんが通訳になってくれ、皆であれこれとお喋りをしました。お兄さんの何人かはサウジアラビアに住んでいるそうで(アカバから数十キロでサウジだからね)
「なんでお前達はサウジには来ないんだ?遊びにこいよ。」
「行ってみたいよっ!でも日本人はサウジに入国できないんだ。」
「なんで?日本人なら沢山いるぞ?」
「ビジネスはいいの。観光では行けないんだよ。」
「へーっ、そうなのか。」
そりゃあ、私だってサウジに行ってみたいですよぉ。ジッダでしょ?ネフド砂漠でしょ?ロレンスゆかりの地がたくさんあるんだから。

この中庭でキャンプ・ファイヤーしました
そしてダンナが自動車関係の仕事をしていると知って、皆が車についてあれこれと聞いていました。
「古い車から取ったパーツは日本ではタダなのか!?それをこっちに輸入してくれれば儲るぜっ!俺と組んで商売しよう!」
と盛んに誘われて、ダンナは苦笑いしてました。
モハマド君の小さな甥や姪たちは、照れくさそうに笑いながらも私達の近くに座ってる。で、大人達に追い払われるとキャーキャーと逃げていくけれど、また嬉しそうに私達の周りに座ってました。なんだか自分が小さい頃もこんな感じだったなぁ。お客さんが大勢くる宴会って、ワクワクしたよねぇ。
すると、私だけが子供達に呼ばれ、付いて行くと、少し離れたテントの中では、女性たちだけの宴会が始まっていました。そうなのです、たき火の周りの宴会では、女性は私一人だったのです。やっぱりイスラムでは男女同席については厳しいんだね。そちらでは、モハマド君の姉妹や義理の姉さんたちが集まっていて、彼女達も日本人と話しをしてみたかったみたい。でも英語が話せる人がいなくて、簡単な単語を並べての会話でした。
「あの男の人はご主人?子供は?」
とか色々と聞かれ、若い女の子からいきなり、
「ユー、ハズバンド、ラブ?」
えっ!?面と向かってそんなコトを聞かれても、答えにくいぜ(汗)
「まぁ、そうかなぁ。」
なんて答えると、みんなキャーキャーと大騒ぎ!なんだよぉ〜!キャーキャー言うなぁ〜!(笑)すると、別の娘さんが年上の人に、
「英語で何て言うんだっけ?ハズバンド?(と、私の方に向き直って)ハズバンド、ラブなの?」
「ん〜、まあね〜。」
すると、また全員でキャーキャーと大騒ぎ!だからキャーキャーじゃないってばぁ!(苦笑)
そんな調子で酒(紅茶)の肴にされているうちに、すっかり夜も更けて、ふと空を見上げると満天の星空!!うわぁ!!天の川もはっきり見える!まさに、ロレンスが書いた詩「To SA」の中の一節「The sky in stars(星々の中の空)」そのものだ。夜空に星が浮かぶ(Stars in the sky)のではなく、無数の星の隙間に夜空が見える(The sky in stars)かのような、星で埋め尽くされた夜空だ。この言葉の意味を自分の目で確かめたくて、夜のワディ・ラムに来てしまったようなものだったので、ほんとに感動的でした。来てよかったぁ。
そして11時過ぎ頃に兄弟もまたサウジアラビアへと帰っていき、私達もテントの中で横になりました。夜の砂漠は、モハマド君が貸してくれた布団にくるまっても、ちょうどいいくらいの涼しさ。「寝るのがもったいないなぁ。」いつまでも星空をテントの隙間から見ていたい。でもさすがにヘトヘトか・・・。