シリア・ヨルダン旅行 2006年7月
ーアラビアのロレンスを巡って、初めての中東ー

7月23日part 2/パルメラ遺跡

2時に迎えにきてくれるワリドさんたちと別れ、パルメラ遺跡に入ると、ラクダを連れた客引きが、「ラクダはラクダ!」と、いきなりジャパニーズ・オヤジ・ギャグをかましてきました。それを苦笑でやり過ごし、遺跡正面の門をくぐると、そこには見事な列柱が立ち並ぶ古代都市の目抜き通りがありました。


パルミラ遺跡

遺跡全体はほとんど修復が進んでおらず、全体としては巨大な廃墟。そして隣の紛争の影響なのか、この広大な遺跡にほとんど人がいない・・・。空は雲ひとつない抜けるような青色だけ。この廃墟の静けさと、砂漠と空の2色しかない風景が、痛いくらいに目や耳に染み込んでくるようでした。

しかし、そんな砂漠のド真ん中にある遺跡に、昼の12時に来てしまったので、気温はそれほど暑くないけど、とにかく日差しと空気の乾燥がキツい・・・。「これだけ人がいなきゃ、笑われる事もないさ」と、頭布とアーガルを巻いてまたもやロレンス気分を味わおうとしたら、途端に、数少ない観光客のアラブ娘たちとすれ違いざまにクスクス笑われてしまったぁ。

いいんだもん!これ、涼しいし、日避けにもなるんだもんっ!と、開き直って頭布を巻いたままにしていたけれど、それなのに、またしても段々と体が動かなくなってきた(実は軽い脱水症状か熱射病になっていたのかな?)持っているペットボトルの水はぬるいし、冷たいモノが飲みたいなぁ、と思っていたら、他に観光客がいないので、ずっと私達の後を付いてくるジュース売りのジイさんがいました!


ジュース売りのジイさん

よし、ジイさん!買ってやるぞっ!と近寄っていくと、嬉しそうにいそいそとクーラーボックスを開けて待ってるジイさん。
「ヤバーン?アハラン・ワ・サハラン(日本から?ようこそ)」とのジイさんの挨拶に、
「アハラン・ビカ(こちらこそ)」と答えた途端、
「うお〜っ!!おまえ、アラビア語がわかるのかよっ!?」と、ジイさん大興奮!
いや、挨拶ぐらいならね(苦笑)

でも、大喜びのジイさんは、「よし!まずはここに座れ!それで、その頭のはマダムがつけるモンじゃないんだぞ」みたいなコトを言いながら、私のアーガルを取ってしまいました。ああっ・・・。そしてジイさんは「マダムはこうだ」と、女性用の頭布の巻き方を教えてくれました。さらに、そのまま即席の観光ガイド兼アラビア語の先生となり、「ここはな、銀行なんだ!ここにパルメラの文字が書かれているんだ」なんて、アラビア語と英語のごちゃまぜで周りを案内してくれました。

「太陽が昇るだろ?その時は『サバーフ・ンヌール(おはよう)』だ。」
それは知ってる!返事は、「サバーフ・ンビハイル(おはよう)」
「おお〜ッ!(ダンナに向かって)ムッシュー!ムッシュー!このマダム、頭がいいぜっ!!」なんて叫んでました(笑)

そんな騒ぎのせいか、近くにいた数少ない観光客がおもしろがって集まってきてしまいました。コラコラっ、見せ物じゃねえぞっ!

でも、もうすぐ待ち合わせの2時になっちゃう。「指差し会話本」を出して、「2時」の字を指差すと、「2時か?ワヘド(1時)、イトゥーネン(2時)、タラータ(3時)・・・」と、またもやジイさんのアラビア語教室になってしまい、違うってば(苦笑)「え〜っとね、私、彼、行く、2時」みたいに単語を並べていると、ニヤニヤと私たちを見ていた2人のアラブ人青年が、
「もういいから、英語で話してみろ(笑)」
彼らに待ち合わせのコトを話すと、ジイさんに通訳してくれ、それで皆さんと「マア・サラーマ!」とお別れしました。



パルメラ遺跡のローマ劇場

アラブ城から見るパルメラ遺跡

待ち合わせ場所に着くと、まだワリドさんたちは来てませんでした。ダンナがフラフラと歩いていってしまうと、遺跡のはずれだったその辺りは、物音一つもしない静けさ。ロレンスの「耳が聞こえなくなったのかと思って、思わず耳をこすってみる」という言葉を思わず実践してみちゃった。

ワリドさんたちはちゃんと時間通りに迎えにきてくれ、それから遺跡の近くにある現在のパルミラの街に行き、ホテルで昼食をとりました。ナツメヤシの森の中にあるホテルでは、子供たちがプールで大騒ぎ。さっきまでの世界とは一転して、ナツメヤシの緑と水の匂いが気持ちいい。砂漠のオアシスにたどり着いた隊商たちは、こんな気分だったのかな。

周辺の遺跡は夕方から見学可能で、ワリドさんが博物館で遺跡のチケットを買ってきてくれましたが、なぜか男性が一緒に車に乗り込んできました。「えっ?だっ、誰っ??」しかもその人からいきなり「ほらよっ」と巨大な鍵の束を渡され、更に「???(汗)」するとワリドさんが、「この人はその遺跡の管理人だよ。そこまで乗せていくから」と説明してくれ、えっ?じゃあ、この鍵の束はその遺跡の鍵なの?!なんだ、ビックリしたぁ。というか、この管理人は普段はどうやって仕事してるんだよ!?(苦笑)



パルメラ遺跡のメインから少し離れたところに、「墓の谷」と呼ばれる遺跡郡があり、これは当時の豪族たちのお墓だそうです。到着すると、2、3台のバンがお客さんを乗せて、管理人の到着を待っていました。なんだ、意外と観光客が来ていたんだな。

まずは「三兄弟の地下墓室」と呼ばれる遺跡を見学しました。中の壁画がきれいな遺跡でした。

見終わって外に出ると、ダンナが
「あれっ?アレッポまで乗せてくれたタクシーのニイちゃんだっ!」
外で客を待っていた車の運転手が、あのニイちゃんだったのです。今日はパルミラ観光案内!?向こうも私達に気がついて、笑顔で手を振ってくれました。

観光客が遺跡から出ると、管理人は鍵をかけて、また私達の車に乗り込みました。そして私達が次の遺跡に向うと、すべてのタクシーが私達の後をついてくる(笑)この遺跡は、こういうシステムなの??

次の遺跡は「エラベール家の塔墓」という遺跡でした。でもここのお墓にあった彫刻は、顔がすべて壊されていました。「イスラム教がきた時に破壊されたんじゃないの?偶像を否定しているから」とダンナの説ですが、真偽はいかに?



お腹が危険なコトになってるけど、ガマン(苦笑)

そして、管理人とはここで別れて、最後にパルミラ遺跡の入口近くにある「ベル神殿」に行きました。ここは修復作業が進んでいて、巨大な石造りの神殿が見られます。ところがっ!中をグルグルと回っていたら、突然お腹が・・・(汗)う〜ん、アレッポの水が合わなかったのか(単に冷たいものの飲み過ぎかもしれないけど。)

遺跡見学を早々に切り上げて、近くのホテルに連れて行ってもらい、事なきを得ましたが、中東旅行を決めた時に最初に心配したのが、この「お腹ピー」でした(苦笑)慣れない食事や水、そして車の移動が中心の旅で「お腹ピー」になったらどうしよう、と。そこで、タイでキックボクサーだった知人に紹介されたのが、「マルビー」という下痢止め。どんな下痢でも止まると言われたけど・・・うん、確かに(苦笑)シリアに行かれる方はぜひご用意を!でも、ワリドさんによると、「一日、水か砂糖無しの紅茶だけで過ごせばすぐに直るよ」との事でした。

そして、一路ダマスカスへ。砂漠の中の道を進んで行くと、「ダマスカス150km イラク150km」と道路標識がありました。ちょうど両国の中間地点か。この3〜400kmの距離の両側で毎日何十人と死んでいるのか・・・。

そして途中の「バクダット・カフェ」というドライブ・インで休憩(映画とは無関係ですよ。)



バクダット・カフェ

シリアで紅茶を注文すると、小さなガラスのコップに入った熱々の紅茶に、カップ山盛りの砂糖がついてきます。テラスの日陰で一息ついてると、ワリドさんが飲茶の湯のみみたいな小さなカップでコーヒーを飲んでいました。
「それ、カフワ(アラブ式コーヒー)?」
「そうだよ、飲んでみる?」
と、一杯持って来てくれました。中に浮かぶ粉を底に沈めながら飲んでみると、コーヒーだけどスパイシーな風味がありました。コーヒーは苦手だけど、なかなかおいしいかったです。

そして、夕日に染まった赤茶色のなだらかな砂丘を見ながら、ダマスカスに向かって走っていくと、突然、その丘の上に(たぶん)対空砲がズラリと並んでいてビックリ。ワリドさんといとこも、それを見て何か話していて、この地域の緊張をかいま見たようでした。

それから段々と建物や車が増えて、ダマスカスが近くなってきました。既にダンナもワリドさんもグーグー寝てる。さすがに疲れるよね。400kmくらいのドライブだもんなぁ。

夜8時頃に、スルタン・ホテルに到着。
「気をつけてアレッポに帰ってね」と、2人に言うと、
「いや、今日はダマスカスに泊まるよ。さすがに疲れたよ(苦笑)」
急な予定変更ですいませんでした。

3日振りのスルタン・ホテルは宿泊客が増えているようで、ロビーでは宿泊客が真剣にBBCニュースを見ていました。そしてホテルの掲示板には、スイス人向けの避難用政府チャーター機のお知らせが張られていました。シリアの人達の呑気さにつられて、ついつい忘れてしまうけど、やっぱりすぐ隣で紛争は続いているんだよなぁ。

T.E.ロレンスを巡る旅

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番外編

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