アラビアのロレンス 回顧展 & 足跡を巡る旅 in UK Feb/2006

クラウズ・ヒルにGO !! part 4 20/Feb/2006


こちらが一般的に知られている石碑

クラウズ・ヒルを出た後は、管理人さんに教えてもらった近所のロレンスゆかりの場所を廻りました。

まずはロレンスの事故現場にある石碑を見にいきました。これはボヴィントン基地の戦車演習場の見学用駐車場の片隅にあって、木の根元の小さな石(大理石っぽいツルンとした石)に「1935年5月13日この場所でアラビアのロレンスがバイクで事故を起こし、致命傷を負いました」と彫られていました。

しかしこれとは別に、本当の事故現場にもうひとつの石碑があると管理人さんから教えてもらっていたのです(今の道はその頃とは全然違うからね。)道路に沿った小さな林があって、駐車場から小径を入っていくと、苔むした石板が木の根もとに置かれていました。消えそうな文字で、日付と「T.E.ロレンスがこの近くで致命傷を負いました」と刻まれていました。新しい石碑は戦争時のロレンスの友人が寄贈したものみたいで、だから「アラビアのロレンス」と刻んだのかな?

でもここにもバイクが走れたような道の面影はまったくなく、事故現場だという実感はぜんぜん湧いてきませんでした。

演習中の戦車を横目に見ながらここを離れ、次はモートンにあるロレンスのお墓に向かいました。管理人さんからもらった地図を頼りに走っていったのですが、う〜ん、見つからない。おかしいなぁ。そんなにコテージから離れてはいないはずだけど。「さっきの道で曲がらなきゃいけなかったのかな?」と、道を戻って、車が出て来た細い脇道に入ると・・・しえ〜っ!ここ、沼地だよっ!沼地の中の畦道のような細い道!絶対に違う!ちょうど犬の散歩をしていた人に聞くと、方角は間違っていないけど元の道を走った方がよいと言われ、「タイヤが落ちませんようにぃ!」と、エンストを起こしながらも必死にUターン。


こちらが本当の事故現場にある石碑

「なんであんな道が地図に載ってんだ?」と、もらった地図をよく見たら、「トレッキング・マップ」って書いてありました。そりゃダメだ(苦笑)

自力で探すのは断念して、小さな村の中のガソリンスタンドで聞いてみました。すると、ここにくる途中の脇道を行けば良いとのこと。確かその道には、「モートン」と書かれた小さな標識があったな。

その脇道に入るとすぐに教会の掲示板がありました。見つけたぁ!・・・と、思ったけれど、肝心の教会が見えない。道を進んでいくと、また人家のないヒース(荒野)になってしまった。なんでだよぉぉ!?またエンスト起こしまくりながらのUターン。ああ、田舎道はUターンも一苦労(汗)

「教会はどこなんだよぉ〜!」と、道を戻ると、あれ?今、墓石が見えた?ヒースの中に生け垣で仕切られた一角があったので、その木造の小さな白い門の前に車を止めて、中に入ってみました。


ロレンスのお墓

そこは小さな、小さな墓地でした。真ん中に赤レンガの小径があり、その先の低い木立の向こうにロレンスのお墓はありました。写真で想像していたより、ずっと小さなお墓でした。ヒースの中のその墓地は、とても静かで物音一つせず、そんな穏やかな空気の中で、ロレンスがいつも見せていたように口元に微笑を浮かべて本当にここに眠っているような気がして、「よかったね。やっと静かに眠れているんだ。もう起床ラッパは鳴らないよ」と思ったら、涙があふれてきました。

ここだけはこの先も静かであって欲しいと思いました。誰もロレンスを起こさないようにね。

それからまた車に乗って、今度はウェアハムの村を目指しました。ケニントンによるロレンス像が置かれている教会があるはず。

ヒースの中の田舎道を走っていると、そこは細くて曲がりくねって上下する・・・これって、まさにロレンスが事故った道みたい!?そういえば管理人さんが、クラウス・ヒルへの道があんな風に変わってしまったので、映画のオープニング(ロレンスの事故シーン)は、このあたりの道で撮影されたと言っていたな、なんて考えていると、いきなり対向車がきて、「うおおぉ!」焦るぅぅ!ロレンスの墓参りの帰りに事故死なんて、シャレにもならんぞぉ!

道路標識にしたがって走っていくと、すぐに村に到着しました。でも教会はどこだ??少し走っただけで村を出てしまい、慌ててUターン。村の中心にあった歩行者用の道案内をジッと目をこらして見ると、教会の名前があった!この先だ!すると、すぐに教会は見つかりましたが、車をどこに停めよう、なんて考えているうちに、また村から出ちゃった。ラウンドアバウトでグルリと回り、素直に中心地の駐車場に停めておきました。


ロレンス像のある教会

とても古そうで小さな教会で、扉を押すと、「ん!?鍵がかかっている?!」ここまで来たのに入れないの!?よく見ると、扉に小さなプレートがかかっていて、そこには「閉まっている時はノース通りの○○番地で鍵を借りて下さい」と書いてありました。どういうコト?よく分からないぞ。とりあえず近くの雑貨屋さんで聞いてみると「隣がその番地よ。そこで鍵を借りなさい。」と、教えてくれました。

隣はテーラーでした。「すいませ〜ん」と入っていくと、「はい?」と店の奥から男性が出てきました。「あの、教会の中を見たいのですが。」「ああ、はいはい。」と、机の引き出しから古い大きな鍵を出してくれました。「もし一人になりたかったら、中から鍵がかけられるからね。」とも言われ、いえいえ、別に懺悔したい訳じゃないから(苦笑)それにしても、いくら教会は全ての人に開かれているとはいえ、私みたいな明らかに旅行者の外国人にも簡単に鍵を貸してくれるのには驚きました。

その大きな鍵を扉の鍵穴に差して回すと、「ゴトン」と大きな音をたてて鍵が開きました。

中に入ると、この教会がかなりの年代ものだと分かりました。十字架も派手な装飾もなく、消えそうな壁画が年月を物語っていました。どうも10世紀頃の教会らしく、そういえば外観もゴシック様式の教会とはまるで違うシンプルなものでした。

そしてその片隅に唐突に「横たわるロレンス像」がありました。とても不思議な空間でした。英国の田舎の村の小さな古い教会の中に、本来なら縁もゆかりもないアラブ装束の男の彫刻が横たわっているんですから、そりゃあ奇妙でしたよ。なぜここに納められたのか、それを村の人はどう思っているのか聞いてみたかったです。
(後日談:友人の旦那さんがこの地域の出身で、彼によると、ロレンスがドーセットを気に入って、ここで暮らしていた事を、地域の人達はとても誇りに感じているんだそうですよ。)


古い教会の奥にひっそりとロレンス像

しばらく彫刻を眺めて帰ろうとすると、老夫婦がやってきました。あ、どうしよう。この人達がいると鍵がかけれないし、でも自分で借りたものは自分で責任を持って返したいし、と、オロオロしていると、
「私たちは少し見てすぐに帰るから、待っていてくれる?」
「あ、はい!じゃあ外で待ってます。」
外のベンチで教会を見ながらボーッとしていると、言葉通りに二人はすぐに出てきて、「ありがとうね」と言って去っていきました。村人ではなさそうだし、ロレンス目当てでもなさそうだし。ここは割と観光客が来るのかなぁ。

ともかく鍵を返し、今日のロレンス巡りは終了〜。ホッ。

んが、しかしっ!サザンプトンへの帰りは迷いまくってしまいました。乗るべき高速の番号を忘れ、「まぁ東に向かっていけば帰れるだろう」と、またここでまた適当な性格が災いし、なかなかサザンプトンの標識が出てこないので、同じ方角にあるボーンマスという町を目指して走っていきました。すると、当然というか、気がついたら思いっきりボーンマスの町の中に入っていってしまい、道路標識は「市役所」だの「港」に変わってしまっていました。

いか〜ん!もうじき帰宅ラッシュの時間になるし、それに日が暮れたらよけいに道が分からなくなる!かなり焦って、またガソリンスタンドに飛び込むと、道を聞けそうな店員がいない(汗)「そうだ!トラックの運ちゃんだ!」ちょうどガソリンを入れていたトラック運転手をつかまえると、「前の道を戻って、最初の交差点を左に曲がって、あとはひたすら真っ直ぐ行け!」と教えてくれました。

言われた通りにいくと、すぐに道路標識に「サザンプトン」の名前が出てきました!良かった、帰れるよ〜!!

ひたすらひたすらサザンプトンに向かって車を走らせ、無事帰りつきました、が!ここからがまた大変!だって「レンタカー営業所」なんて標識はありません。「今、私はサザンプトンのどこにいるんだぁ!」しかも街の中に入ると交通量も増え、焦る、焦る!

しかし駅を見つけたので、そこから朝に歩いた道順通りに走りました。信号が変わってスタートしようとすれば、坂道発進を忘れていきなりバックして冷や汗モン!エンストおこさないように思いっきりふかせば、通行人の視線が痛い!ああ、もうイヤ!とにかくホテルを通って営業所に無事たどり着き、近くのスタンドでガソリンも入れ、営業時間は過ぎていたけど残っていた店員が返却手続きもしてくれて、あああ、無事に帰れた(涙)夜のELBOWのライブの時間まで、ゆっくり休憩だぁ。

無事に終わったロレンス巡りのショート・トリップでしたが、クラウズ・ヒルとその周辺は、車か自転車がなければ回れませんので、行こうと考えている方はちゃんと計画を練って行きましょうね。私もどこかでミッション運転の練習をして、次回はゆっくりドライブ気分を味わうぞっ!・・・って、また行く気満々なのか?!


ケニントン作のロレンス像

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番外編

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